2005年05月23日

「悪い男」再びそして前半

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全部書いてしまいますので、未見の方は注意してください。


2度目と言っても何度も見てるような気もするし、久し振りのような気もする。でもやはり久し振りに観たのだろうな。最初のチョ・ジェヒョンを見て昨日見たチョンへとあまりに違うので驚いてしまった。昨日のジェヒョン=チョンへの饒舌で可愛らしかったのに対して「悪い男」のジェヒョン=ハンギのまるで腐りきってしまっているかのような悪党ぶりはどうだろう。
何も知らない女子学生ソナを自分をにらみつけた、と言うだけで売春宿に送り込んでしまうような男である。二人の子分を使ってそれらのことをやらせるようなやくざである。(たとえ、追加として男たちに殴られ、彼女から唾を吐きかけられたといってもそれは自分がやった人前で強引にキスをした結果である)その汚さを女学生ソナは酔いつぶれてハンギの腕に吐瀉物を吐き出すことで表現している。

ソナが出来心で目の前に置かれた財布を自分のものにした、という行為の代償はまだ21歳でしかない彼女の人生を犠牲にするものだった。清純な彼女が売春宿に送り込まれる過程は見ていても大変に惨たらしくつらいものだ。女性なら何故あのくらいのことでこんなにもひどい目にあわせられるのか、と憤りを覚えるだろう。それもみなハンギをにらみつけた一瞬から始まったこと。全てはハンギが仕組んだおぞましい罠なのだ。

ハンギにはのどに大きな傷がある。そして言葉を話さない。それはその傷のためのように思われるが、ハンギは話せない、のではなくて話さない、ということらしい。
ハンギは一言も話さない。それで観客は全てを想像することになる。ハンギはソナに好意を持ったはずではないか。なぜこんなにもひどいことをするのだろうか。それともハンギは全くソナを好きになったりはしなかったのか。ただ彼女の自分を軽蔑した視線に対しての復讐だったのか。では何故ソナが別の男に抱かれている時、ハンギ自身が苦しんでいるかのように見えるのか。売春宿であてがわれたソナの部屋にはマジックミラーがはめ込まれており、彼女側からは鏡として見えるものが、裏の小部屋からはハンギが中の様子を覗けるようになっている。そこからハンギは自分につばを吐いたソナが他の男(あるときは自分の子分)に抱かれている様を覗いているのだ。が、その表情は苦悶に満ちており、とても復讐を楽しんでいるとは思えない。

ソナはハンギの計略を知り、怒り狂う。が、結局この売春宿から逃れられないのだと意を決したかのようにかつらをかぶり真っ赤なルージュを引く場面がある。この時、ソナは知らぬうちにハンギが見ている鏡に近づき顔を寄せる。ハンギはそっと恥らうかのようにソナの頬にキスをする。鏡越しに。ソナは知らず、目を閉じる。この映画の中で美しいシーンの一つだ。

ハンギの子分の一人がソナを好きになったことを利用して、ソナは売春やどの脱出を図る。が、すぐにハンギに捕まってしまう。二人は浜辺へ行く。この浜辺は「悪い女(青い門)」でジナが座った浜辺だ。赤や緑の光が眩い売春宿通りとは違い、この浜辺には色彩がない。どんよりと曇っている。その海に一人赤いワンピースの女の後姿がある。髪が長くソナの後姿にも似ている。不思議な光景である。
浜辺にソナとハンギは並んで座る。最初出会いのとき、ソナはベンチに並んで座ろうとしたハンギを嫌い、にらみつけた。ここで二人は砂の上に並んで座ったのだった。それはソナの心が変わっていく過程だった。
また女の座った後にはばらばらにちぎられた写真が埋められていた。ソナはその写真を急いでポケットにしのばせる。
ソナは抵抗を見せるがハンギはソナを元の売春宿へ連れ戻す。

ソナはばらばらにちぎれた写真をつなぎあわせてみる。だが、男女の寄り添った写真が2枚だとは解るがその二人の顔の部分だけが足りない。ソナはそのままその2枚の写真を鏡に貼り付ける。

ハンギは再びソナの部屋に行く。今度はハンギの子分(ソナを好きになった奴ではない方)がその様子を覗いている。
ハンギはただベッドに横たわりソナの手を握りしめ、やがて安心したかのように眠ってしまう。戸惑うソナもベッドからは降りたもののその傍らで眠りに付く。ハンギはまるで胎児のように体を丸くして眠っている。

やはり辛くて苦しい物語だ。売春婦にさせられたソナは勿論だが、ハンギの苦しみ方は何なのだろう。後日、続けます。多分、明日。


ラベル:キム・ギドク
posted by フェイユイ at 23:44| Comment(0) | TrackBack(2) | キム・ギドク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「野生動物保護区域」2度目

野生動物.jpg
香港製なのでこういうタイトルでございます。

ホントはまずデビュー作「鰐」を観たかったのだけどまだ字幕DVDは手に入らないので2作目から観ていこうかと思います。

前回は字幕なしビデオだったのですが、今回中文字幕付きDVD。中文とはいえ意味が少しでも解るのはありがたい。と言うか全然違います。前回観た時は退屈にさえ感じたのですが、今回はまるで違う映画を観ているかのようでした。

前回観た時に書いたことを繰り返し書くかもしれませんが、思ったことを書いていってみます。ネタバレにはなりますのでご容赦ください。

舞台はフランス・パリ、画学生をしながらコソ泥などして生活しているチョンへ(チョ・ジェヒョン)と北朝鮮からの脱走兵ホンサン(チャン・ドンジク)が出会い、暴力団の一味になり人々を襲い金を巻き上げ、また自分たちも殴られ血を流しながら生きていきます。その有様はなんの救いもなく耐え切れぬことのように思えます。

この作品では後の作品の原型になると思われる要素が多々表現されています。出だしの針金細工は「魚と寝る女」をストリップショーのマジックミラーは「悪い男」のそれを。またこのミラーは男と女の愛を隔てまた導くための鍵として用いられています。また水の中の撮影、画学生であるチョンへがホンサンの似顔絵を描くことが愛情の表現になっていること。など繰り返しキム・ギドクの様式とも言える原型がこの映画の中にあります。

逆に他の映画と全然違うと思えるのは男同士の友情が描かれていることです。チョ・ジェヒョン演じるチョンへはくどいほどホンサンを裏切り肉体的精神的また金銭的にも卑劣なことを繰り返すのですがホンサンはチョンへを許し、自分を笑ったフランス人をやり返したことに感謝する表情さえ持ちます。チョンへはとうとう「俺を殴れ」と言いますが、ホンサンは笑ってチョンへを固く抱きしめます。小柄なチョンへは背の高いホンサンの肩の辺りにすっぽりと収まってしまいます。チョンへはただたくましいホンサンの胸の中で涙を流すだけでした。

このときのチョ・ジェヒョンはすごく可愛くて思わずかばってやらなければならないような男を演じています。他の映画例えば「悪い男」や別監督の「清風明月」の時には気づかなかったのに随分小柄に思えます。そのため、北朝鮮の脱走兵ホンサンがすごく背が高くてたくましくかっこいいんです。目がすごくよいですね。フランス人のボスも「お前は目がきれいだ」と言っておりました(笑)

確かにもっと上手く見せる方法もあるだろうし、全体に切れ味が悪いのかもしれませんが、字幕つきで観てとてもいいと思いました。一つ気になったのはホンサンが一味の一人をボスから消せと言われてひとり赴き、恋人と眠っているところに針金で細工をして自ら手を下さずにそいつを殺す(結果女の方に当たってしまうのだが)という緊迫した場面で右下の方にマイクらしきものが見えている・・・まさか!そんな初歩的な間違いをするものでしょうか?でもなぜかマイクが見えてるしなあ。なんだったのでしょうか、アレは。写ってたとしても処理できますよね。私の気のせいか、解る方がいたら教えてくださいな(笑)いやこれは揚げ足取りです、ごめんなさい。

物語にはフランスに住む韓国人女性(幼い時幼女としてフランスへやって来て捨てられたと言う身の上らしい・韓国人は外国人に養子にされることが多いとも聞く)が登場し、ホンサンが心を寄せる存在となる。彼女はストリップショーをしている踊り子で恋人に命じられクスリの運び屋をしているようだ。彼女の恋人エミールはチョンへに殺され腕時計を盗られる。目隠しをされ恋人の血を舐めてその死を知るという演出がなされる。あとでこの盗んだ腕時計で彼女は誰が恋人を殺したのかを知る。

男の友情はラストまで続きます。抱きしめあった二人は棲家にしている船のうえでのんびりと幸せを味わい、ホンサンはチョンへに絵をかけるように用意をしてあげる、というまさにハネムーン状態なのだが、一転、暴力団一味、ホンサンが殺しそこなった男が仲間とともにチョンへ・ホンサンを殺しにやってきたのだった。二人は海を臨むがけっぷちに追い込まれ互いの手に手錠をかけあい、抱き合って袋の中にはいるよう命じられる。そして崖から海へ放りこまれるのだ。このとき裏切り男チョンへは自分の親指を切り取って手錠をはずし、ふたりは助かるのだ。

再び街の中を笑いながら歩く二人は幸せそうだ。その時、恋人をチョンへに殺されたローラが二人をピストルで撃ち殺す。おびただしく流れる二人の血はどこからか流れてくる水に薄められながら排水溝へと落ちていくのだった。

見所は色々あると思うのですが、私としてはホンサン役のチャン・ドンジクがめちゃかっこいいこととチョ・ジェヒョンが他では見れないくらい可愛いというのが、よかった。二人の友情も熱々ですごくいいですね。とにかくギューっと抱きしめられるチョ・ジェヒョンがみれました(笑)




posted by フェイユイ at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | キム・ギドク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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