2005年11月22日

[薛/子]子(ニエズ)第十二集・シャオミンの父、ロンズの父 後半

ロンズはアチンを連れて思い出の家へ向かった。それは10年前、ロンズがアフォンと共に暮らしたあばら家だった。

アチンとその家に向かいながらロンズはアフォンと自転車に乗って行き来していた時を思い出していた。
紅いシャツを着たアフォンは眩しいほど印象的だった。
狭くて暗い粗末な家の中で二人は何者にも邪魔されず、寄り添うことができた。
僕は上半身裸になったアフォンを胸に抱きながら話し合った。
「何故身体にこの刺青をしたの」「これだと誰も俺をいじめないからさ。これを一目見たら逃げだすんだ。あんたは怖くないの」「最初は少しね」
アフォンは言った「俺達は似てないね。あんたは小さい時から大きな部屋と大きな車がある家に住み、誰からも愛されるお坊ちゃんだ。俺は臭い溝の側で育ったよ。腹をすかせごみを集めた所から食べ物を探した」僕は答えた「だから君は心配しなくていい。今は僕が君の面倒を見るよ」「あんたは俺の面倒を見ることはできないよ」「何故できないんだ。僕達は永遠にこのまま一緒にいれるんだ」「俺は信じない」「じゃ、君はどうしたら信じることができるんだ」「来世で」僕は叫んだ「何を言うんだ。そんなことを言うな。言うな。やめろ」「痛い」いつの間にか僕はアフォンの肩を爪あとが残るほど掴んでしまっていたのだ。

その時、僕は突然自分がどうするつもりなのか怖くなった。こんなにも激しい欲望で彼を完全に独占したかった。僕は不安になった。もしこの欲望をコントロールできなくなったらどのような災難が訪れることだろうか。

僕は外国の小説の翻訳を出版社に持って行ったが、褒められただけで金にする事はできなかった。
そして爺が僕の後をつけて来るのに気づいた。彼は何日か前から僕をつけていたのだ。母からの頼みで僕を監視していたのだった。僕は彼に母に伝えてくれと言った「ここでとてもよくして暮らしていると。そしてこの親不孝な子を許してくれ、と」僕は去ろうとしたが、爺はひきとめ、母がくれた金を押し付けた。私は返そうとしたが、仕方なく受け取った。

新公園の博物館の前を警官がうろついているのを楊教頭は気づいた。急いでアフォンを見つけると叱りつけた「警官がお前を探しているのがわからんのか。お前があのワン・クイロンを誘拐しているのだぞ」アフォンはぎらぎらとにらみつけた。「俺がいつ彼を誘拐したんだ。あいつが俺と一緒にいるんだ」「私達は何の力もない輩だが、ワンという父親がどういう人物なのかわかっているのか。あの方がもし怒ったらお前の命など保障はできん」「俺はそんなもの怖くはないぜ」楊教頭はさらに言った「私は前言わなかったか。お前達は罪の縁だ。どうにもならない、と」「もう一度言ってみろ」「どうにもならないのだ」アフォンは楊教頭の胸を突くと行ってしまった。

僕達の家の前に一台の車が停まっていた。
アフォンが遅く帰ってきて僕はむしゃくしゃして怒鳴った。勝気なアフォンはすぐにかっとなって言い返した。僕はあやまった。アフォンはむっとして言った「こんな生活長くはやっていけないさ。外で誰か見張っているぜ。家に帰ったらどうだ。どうせ俺達は同じ世界の人間じゃないんだ」「お前は僕を咎めているのか、それとももう飽きたのか」「馬鹿野郎」「それでも僕はお前から離れないぞ」「知ってるさ」「じゃお前も僕から離れるな」そして僕は外に停まっている車に向かって走って行った。「出ろ!出てこい。帰って彼らに言え。僕は死んでも戻らないと。解ったか」その様子をアフォンは呆然と見ていた。

アフォンが一人きりで家の前の草原に寝転んでいると車が停まった。中から出てきたのは爺とロンズの母親だった。
「あなたがアフォンですね」「奴はいないよ」「知ってます。私はあなたに会いに来たのです」
ロンズの母は家に入りなおアフォンに話しかけてきた。「あの晩、私ははっきりとあなたを見ることができませんでした。こんなに綺麗な子だとは思いませんでしたよ。あなた方はどこで知り合ったのですか」「公園。新公園」「では、あなた方はどういう関係なのですか」「あんたに言うのか」フォン爺が口を挟んだ「あまり妙な事をいうんじゃないぞ」ロンズのママは爺を止めた「私はあなたを苦しめに来たのではないわ。私はただあなたの口から私に言って欲しいのです」「何を言えってんだよ。俺はあいつが好きであいつは俺が好きなんだ。そう言う事さ」フォン爺は再び口を挟む「奥様、こいつの嘘など聞く必要はありませんぞ。見てください。こいつのからだの龍と鳳の刺青を。もともとならず者なのですよ。坊ちゃまや私達とは違うのです。きっと一時的に騙されたのですよ」アフォンは哀しげな目で見つめたが何も言わなかった「アフォン。私があなた達の考えを理解できないのは許してください。でもこのことは母親として話しているのです。どうしても受け入れてもらえないのですね」「すまないね。あんた達は探す人を間違えたようだ。この話は彼にしなきゃな。俺は奴を拉致したんじゃないぜ。奴が俺と一緒になりたがったんだ。もしあんた達が我慢できないなら遠慮せずに彼を連れていきなよ」
母親は言った「あなたがもし本当に彼をわかっているならそんなことは言えないはずです。ロンズは小さいころから甘やかされてとても頑固なのです。彼がもし行かないと思うなら彼は死んでも行かないでしょう」「それで」「あなたは賢い子でどうすればいいのか解るでしょう」「あんたは俺に自分から奴と別れろと言うんだな」「あの子は外国へいって学問をするはずだったのです。あなたはもし本当に彼を好きならつまづかせないで。彼に辛い思いをさせないで」「あんたは俺達が一緒にいたらとても楽しいって解ってるのかい」「でもそれは今だけ。これからは、人目をはばかるだけだわ」「俺は他の奴が俺達をどう見るかなんて気にしないさ。あんた達には解らないんだ」フォン爺が激しく言った「解る。お前達のそういう関係は軍隊の中ではとっくに銃殺だ」アフォンは怒った「なんだと。あんた達は権力を振りかざしてそういうことをするんだ。いっそのこと俺達二人撃ち殺せよ」母はアフォンの手を取って言った「アフォン、落ち着いて。聞いてちょうだい。もしかしたら私は今まで真のあの子を理解していなかったのかもしれません。もしかしたらあなたは確かに彼を真心で愛しているのかも知れません。ただ、私はお願いするのです。あなたの為、ロンズの将来の為に。彼と別れて」

ロンズは急いで帰ってきた「アフォン、起きろよ。見てごらん。うまい物を買ってきたよ」
アフォンの姿はなかった。置手紙があった「アフォン」外を見た「アフォン」彼はいなかった。

ロンズは新公園を探し回った。行きかう男達に聞いてまわった。だがアフォンの行方を知るものはなかった。ロンズは探し回りつかれてベンチで眠り、警察に捕まった。
フォン爺が身柄を引き取りに来てくれ、ロンズは家に帰った。
将軍である父親が待っていた。ロンズを跪かせ棒で打った。母親が心配して間に入った。
「言え。お前とあのならず者は一体どうした事なのだ。言え、言わんか」「私は彼を愛しています」「何だと。今なんと言った」フォン爺が止めに入った「将軍、気を落ち着けて。坊ちゃまは一時的にぼおっとなっているのです」「僕はぼおっとなっていない。はっきりしているんだ。僕は彼が好きなんです。僕はアフォンを愛している。僕は彼と一緒にいたいんだ」「恥知らずが!このばか者が!打ち殺してやる!」将軍はロンズを叩きつけた。母が止めた「やめて。充分です。子供を殺してしまうわ」「見ろ、お前が育てた子だ」「ロンズ。早くお父様にあやまって。もう二度と過ちは犯さないと言いなさい。もう二度とあの人を探さないと」「嫌だ。僕はアフォンを探す」フォン爺は叫んだ「坊ちゃま。もう目を覚ましてください。彼はもうあなたと別れたのです。あなたが彼を探してどうするのです」「何だと。あんた達がアフォンを隠したのか。そうだな、フォン爺。アフォンを返してくれ」「ロンズ、あなたは彼の為に父母すら顧みないと言うの」「そうだ。僕はアフォンが必要なんだ」「坊ちゃま」
「フォン副官」と将軍が言った「この畜生は私にまかせなさい」「将軍」将軍はロンズを捕まえた「お前がやらんと言うなら、私がやろう」
「パパ、パパ、お願いです」「将軍」「パパ、僕にはアフォンが必要なのです」「将軍」

アフォンは一人でロンズと一緒に歌った歌を口ずさんでいた。とても小さな声で。ずぶ濡れになったままの姿で。

原作:白先勇 監督:曹瑞原 出演:柯俊雄(李父)柯淑勤(李母)范植偉(李青)張捷(幼年李青)楊祐寧(趙英)金勤(小玉)阿鳳(馬志翔)龍子(トゥオ・ゾンファ)楊教頭(丁強)呉敏(張孝全)老鼠(呉懐中)林義雄(林茂雄)李昆(老周)








posted by フェイユイ at 22:10| Comment(2) | TrackBack(0) | [薛/子]子(ニエズ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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