2005年12月12日

笑傲江湖・男性と武芸

まだDVDが届かないので、思いついたことをまた書いてみます。
このブログは「基本的にネタバレです」と上に表記しているとは言え、「笑傲江湖」はドラマなのでこれまでは順を追って書いてきました。ドラマはまだ途中までしか見てませんが、ここでほとんど原作を読んでしまったので今から書くことは完全ネタバレになっています。
いきなり種明かしを見たくない方はここから先は読まないでください。
また、ここに書いているのは私の勝手な考えですので至らぬ点はご容赦ください(でも勘違いしている部分があったら教えてください)

ラブ・ストーリー、とこの前「笑傲江湖」の事を書いたのだが、それとまた別にこの小説は問題を含んでいる。もしかしたら、甘いラブストーリーと言うのはこの苦い問題を包み込むためのオブラートに過ぎないのかもしれない。

「天龍八部」の感想としてその数多くの異常な愛の形を取り上げた。不倫、兄妹愛、サディズム、マゾヒズムなど。この「笑傲江湖」の中で語られるのは男女のセックス・ジェンダーと言う事である。それは「天龍八部」「射[周鳥]英雄伝」のなかでは殆ど扱われてなかった事柄なので作者は特にこの物語の中で語る意思があったに違いない。

最も顕著な例は勿論、東方不敗である。武芸の極意を手に入れたいと願った彼は任我行から渡された「葵花宝典」に書かれていた「神功を習得したくば、刀で去勢せよ」の言葉通り、睾丸を切り取ってしまう。その糸はそこで途切れてしまうわけではなく、親の仇を討ちたいと念願する林平之、そして崋山派の掌門である岳不群までもがその道を進んでしまう。だがそれは「葵花宝典」ではなく「辟邪剣譜」によってであった。世にも稀な武芸書の二つともが最高の武芸を手に入れるために男性性器を失わなければならない事を礎にしているとは。
男性とは強くなりたいと願うものかもしれない。そのために男性でなくなってしまう、とはどういうことなのだろうか。レスラーなどで見事な筋肉をつけるため薬を用い、そのため性器が小さくなったという話を聞いたことがあるが(見たわけではない)強さと男性性というものの繋がりを考えてしまう。

そしてこの3人は男性でなくなっただけでなく人格までもがおかしくなっていくのが悲しい。それは別に男性性器を失ったから、ということでなくそういう間違った願望を持ってでも強くなろうとする人間の来るべき結果ということなのだろうか。

そして東方不敗の役に女性を使うのはやはり間違いなのだ。(「スウォーズマン」でのブリジッド・リンはもう全く違う話なのでかまわない)そして恋人の楊蓮亭を宦官だとしてしまうのも。
東方不敗の悲しさは盈盈にとっていい伯父さんだった彼が強くなりたいという欲望のために男性性器を失い、女装しているところなのだ。彼は20代の楊蓮亭よりずっと年上で(童百熊と義兄弟なのだから)しかも女装し、楊蓮亭と男色の関係にあるのだ。宦官では肉体関係をもてないのだからこれは完全に逃げですよ。従ってその通りの中年男性がやった方がよかったのだ(私は中年の男性が女装して男色である事に何らの悪い感情は持ちません。じっとは見ますが)作者・金庸さんも女性が演じている事に不満だったと言う。これは男性の役者がやってこそ意味があるのだ。この物語の核心を逃げられては意味をなさなくなってしまう。

東方不敗だけでも問題なのだが、若い美男子の林平之と人望厚い正派・崋山派の掌門・岳不群までもが同じ事を繰り返す。
小説中、令狐冲が盈盈に聞く「俺も葵花宝典を学ぶのが心配か」笑って聞くのだが、令狐冲もまた強くなりたいと望んでいる男なのだ。その可能性がないとは言えないのだろう。

瑣末な事を色々書くことになるが、原作では令狐冲も女装をする場面がある。まだドラマでは観ていないのでたくましい李亜鵬が女装しているのか気になる。
また令狐冲が悪い女に「言う事を聞かなければ去勢するよ」と言われる場面もある。令狐冲と盈盈は動けず話せないよう点穴されてしまっている。そこでまばたきだけで会話をするのだが、令狐冲は盈盈と深く心が通じ合っている事を感じる。そしてたとえ宦官にされても関係ない、死のうが生きようが関係ない、この一瞬は永遠に消えないのだ、と思うのだ。

またドラマでは好色家・田伯光はそのあまりの淫蕩ぶりに不戒和尚から今度女に手を出すと死ぬという薬を飲まされていたが、原作では去勢されてしまったのだ。これにもかなり驚いた。

「笑傲江湖」と言う物語の中に正邪の戦い、男女の愛、武芸の達人になる事への強い欲望、そのために男性性を捨ててしまった男達、そして美しい音楽、といったものが織り込まれている。
男性は強さと男性性のどちらを取りたいと思うのだろうか。

ドラマを見終わり、原作本を図書館の期限が許す限り読んでまた感想を書いてみたいと思います。


posted by フェイユイ at 22:47| Comment(7) | TrackBack(0) | 笑傲江湖 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

電影版《[薛/子]子》

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いつもお世話になりっぱなしの石公さんのブログ「夜目、遠目、幕の内」で、「2005年11月に、幻の電影版《[薛/子]子》(1986年・虞勘平監督)のDVDとVCDが台湾で発売になっていた」という事が紹介されていて衝撃!
yesasiaでも販売されていると言う事ですが、全く気づかず、石公さんのおかげでやっと知って、今注文をかけているところです。
これとドラマ「ニエズ」を比べて観てみたいものです。わくわく胸躍る。

そして早く「ニエズ」原作の翻訳出版してくださいよお。
posted by フェイユイ at 00:35| Comment(4) | TrackBack(0) | [薛/子]子(ニエズ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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