2006年06月01日

「ブエナ☆ビスタ☆ソシアル☆クラブ」その2

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昨日書ききれなかったのでもう少し。

夏が始まるとこういう音楽が聴きたくなる。仕事が終わった宵に涼しい風を感じながら好きな酒を飲みながらだとまた格別だろう。

クーダー親子がサイドカー付きバイクでハバナの海岸通を走り抜ける。波飛沫が道路にまで激しく打ち寄せてくるのだ。さらわれてしまわないかと驚くが凄くスリリングでうれしくもなる。
そうだ、この音楽はちょうどこの打ち寄せる波のようだ、と言うのだろうな。二人のオートバイは街並みを走る。道路にたむろする人々。行きかう古いアメリカ車、チェ・ゲバラの肖像画が街角にも掲げられている。
街の中の音がたくさん入り込んでいる。車のクラクション、エンジン音、犬の鳴き声、赤ん坊の声などだ。そのために自分がそこにいるかのような気がする。不思議な感覚だ。これはヴェンダースの技術だね。

キューバ音楽はパーカッションが独特だ。全てにリズムがある。ギターを指で叩きながら歌を歌う。どんな楽器でもとてもリズミカルで明るく楽しい。だけど底には哀しい想いが込められている。
スペイン語の響きがさらに心地よい。ギターの音色、キューバ音楽独自の楽器もある。パーカッションも独特で繊細で複雑だ。トランペット、ピアノ、様々な楽器が奏でられている。
軽さと情熱と苦しさが混じった音楽なのだ。

音楽と映像の共同作業は狡い。キューバの町の様子人々の生活を見せられながら音楽を聴いているともうそこに入り込んでしまう。
窓から吹き込んでくる風にカーテンが揺れている。そんな音楽でもある。

ライ・クーダーがその存在に驚き年齢のこともあって必死で集めた老音楽家たち(急がなければいなくなってしまう!)忘れ去られた音楽家たち、と言われる老人達の技術と魂に鳥肌が立つ。ライ・クーダーはこの比ではなかったんだろうな。映画では極めてクールに映っているが絶対凄いものを見つけた喜びで狂喜したに違いないよね。

昨日書いたフェレール以外にもピアノマンのルベーン。私はキューバと言うと体操などのスポーツなんだけど(彼らのジャンプ力の凄さと来たら!)体操の練習をする子供達の体育館の中でルベーンがピアノを弾く場面は楽しい。

そして「生涯現役」を自負するコンパイ・セグンド。渋い重い声を持つ色男だ。落ち着いた声でセカンド・ヴォイスを担当した事からスペイン語のセグンド=セカンドをあだ名に持つらしい。クラリネット・ギターもこなす。

また映画ではその色彩も美しい。赤や黄、緑などのクリアな色合い。老音楽家達も鮮やかなシャツを身につけている。

ピオ・レイバとマヌエル“プンティジータ”リセアが中庭でドミノというゲームをやっていてスタジオに呼ばれる場面も好きだ。まったく、こんな所で音楽を聴いてみたいではないか。

宵闇がせまるとさらに音楽は甘く響いてくるだろう。

そしてカーネギーでのコンサート。今までコンサートシーンはモノクロに近い色だったのにここではカラーになっている。フェレールの真っ赤なジャケット。オマーラの黄色い髪飾り。
何と言ってもルベーンのピアノが素晴らしい。何とも色っぽいではないか。

夜のNYをフェレールが歩く。英語を覚えたい。妻と子供にもここを見せてあげたかった、と言う。
ここでもヴェンダースの映像は雰囲気があって暗くそこにいるかのような気にさせる。

観客の喝采がやまない。フェレールたちの表情が写る。忘れられた存在といわれた音楽家達が蘇った夜だったのだ。
posted by フェイユイ at 22:16| Comment(5) | TrackBack(0) | 中南米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ブエナ☆ビスタ☆ソシアル☆クラブ」ヴィム・ヴェンダース

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私はこの映画の音楽を表現する術を知らない。音楽的知識もなければ語彙も持たない。それはとても残念な事だ。この映画から流れ出てくるキューバ音楽の魅力を伝えきれないのだから。

この映画に出会ってからまだ1・2年くらいしかたっていない。初めて出会った時はその素晴らしい音楽への驚きと共になぜか昔から聞いていたような不思議な感覚があった。

この映画はギタリストであるライ・クーダーと映画監督ヴィム・ヴェンダースによるドキュメント映画である。従って映像は「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」の演奏家である老人達を淡々と写し撮ったものだ。
だのに映画としてドラマティックであり彼らの音楽を堪能させてくれる。

つまり物語は老人達の言葉によって語られるだけなのだが、僅かに知るキューバ革命の歴史などと重ね合わせて彼らの人生を思いつい目頭が熱くなってしまうのは私だけではないと思う。
彼ら老人音楽家達はすでに長い間、忘れ去られた存在であったと言う。“キューバのナット・キング・コール”と映画の中で称されるイブライム・フェレールは「生きていくのに耐える事が多すぎてもう歌はやめよう、何も得られることはないから」とまで思ったと語る。
その彼の歌声を聞くとそんな言葉は信じられない。若くセクシーであり力強く響きあるいは心にしみ込んでくるからだ。
冒頭、彼の歌う「チャン・チャン」の歌声が流れハバナの町並みをクーダー親子がサイドカー付きのバイクで駆けていくシーンは素敵だ。
そして最後、彼らのNY・カーネギーホールでのコンサート。フェレールは真っ赤なジャケット着ているのだがそれが小柄な彼に凄く似合っていてかっこいい。
1927年生まれのフェレールは50年代には人気があったのだが次第に人気がなくなった。1997年ライ・クーダーとキューバの老音楽家達が作ったアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」はグラミー賞を獲得しそれからの彼らは脚光を浴び活躍したと言う事らしい。そしてフェレールは2005年に亡くなった。
posted by フェイユイ at 00:04| Comment(1) | TrackBack(0) | 中南米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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