2005年12月11日

座頭市 血煙り街道

血煙り.jpg

「破れ!唐人剣」の感想の繰り返しになってしまうと思うんだけど、とにかく映画の作りそのものに目を奪われてしまう。
時代劇、というのは多分年々どうしようもない物になってみているのではなかろうか。お金、ということもあるだろうが、それだけではない何かが確実に失われていっているようだ。まあ、日本人の骨格自体も大幅に変わってきているのだから、仕方ない部分もあるんだが、着物一つ調度品一つにせよ、素人目に見てもいまのそれとこの頃のそれの重さとか渋みとか違う、と思ってしまう。私だってそうだけど着物自体を日常に着ないものが自然に立ち居振る舞いするのは難しいことなのだろう。且つ、町並みや風景人々の行き交う光景などもいちいち今と違う、と思ってしまうのだ。

勝新太郎の座頭市が凄いのは昔から知っているつもりだったが、改めて観てみるとその迫力、かっこよさ、男っぽさ。これもまた今の役者さんでこの色気を出せる人がいるんだろうか、とまたうなってしまう。市さんの魅力は物凄い強いからには違いないが、それだけでない捨て身の怖さ。守ろうと思った者の為に命がけで守り抜く執念のようなものがある。それは決してかっこいい姿ではない。
市さんが助けてやろうと思った子供とその父親がお上に命じられた侍に斬られそうになる。市さんは目が見えないが為に我が身を投げ出して侍の行く手をさえぎる。その様は何がなんでもすがり付いて通すまいとするみっともないやり方だ。座頭市の居あい抜きの鮮烈さに魅了されるのは確かだが、同時に市さんの自分を斬らせてでも守りぬくという心意気に人は惹かれてしまうのだろう。

しかしエンターテイメントというのはこういうのを言うんだろう。皆、市さんになってしまって悪い奴をぶった切ってやりたくなるもんだ。「ああ、嫌な渡世だなあ」とつぶやきたくもなるもんだ。
やっと父親に会えたのに男の子は市さんを慕って追いかけてくる。市さんは身を隠して涙をこぼす。こちらも思わずつんときてしまう。市さんが世界のあちこちで人気あるのは当然だ。こんなに真似をしたくなるヒーローはそういない。

監督:三隅研次 出演:勝新太郎、近衛十四郎、浅丘雪路、中尾ミエ 1967年制作

なお、本作が後、ルトガー・ハウアー主演アメリカ映画「ブラインド・フューリー」としてリメイクされたそうな。


posted by フェイユイ at 00:05| Comment(4) | TrackBack(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読んでいてブラインド・フューリーとの類似点に気付きました。
この作品だったのですね。

ポワロが終わったら、座頭市祭りだな。
Posted by fince at 2005年12月11日 18:56
わ、ストーリーを全然書かなかったのによく解りましたね!
これは面白いですよ、是非観て下さい。
Posted by フェイユイ at 2005年12月11日 23:51
「何かが確実に失われていっているようだ」というのはおっしゃる通りだと私も思います。友人なんかは、「いずれ、殺陣は無形文化財になっちゃうんじゃなかろうか」とも言っています。今の現状を見ていると、あながちありえなくもないのが悲しいです。
この映画は座頭市の中でも屈指の名作ですね。私も子供の頃は、よく座頭市のマネをしたものです。
Posted by サンタパパ at 2006年01月11日 02:12
かっこいい殺陣というものはもう存在しないのですか?殆ど現在の時代劇というのをきちんと観てないのでうまくは言えないけど、テレビでちらほら映し出される時代劇らしきものを(TVドラマでも映画でも)観てもかっこいいと思ったことがありません。思えばもう絶対観ちゃうんですけどね。
Posted by フェイユイ at 2006年01月11日 22:25
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Weblog: かたすみの映画小屋
Tracked: 2006-01-11 02:13
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