2006年01月26日

[薛/子]子(ニエズ)第十五集 弟の思い出 後半

アチンが連れてきた口の利けない少年はリーユエの息子チアンニーと向かい合って笑った。
突然少年がいる事に気づいたリーユエは驚きアチンに問いただす。
「うちは収容所なの。こんなどこの子かもわからないのに連れてきて」アチンは夜中に一人で公園にいたので可哀想になったのだ、と言うと「今はもう昼間だわ。彼を送っていってあげて。私は警察から誘拐したのか聞かれたくないわよ」アチンが家がわからない、と言うとリーユエは少年から聞き出そうとした。が、何度訊ねても答えないのでリーユエも気づいた、彼は聞こえないし、話せないのだと。彼女は喚いた後、後悔してあやまった。「ごめんね、おばちゃんが牛乳をあげるわ」しかし牛乳はすでに昨夜アチンが男の子に与えてしまった。リーユエは再び怒り出した。「マンゴーもないわ。明日買ってきて返してよ!アチン、よく聞いて。あなたは面倒を起こしているわ。自分で解決方法を考えて。彼をどこに連れて行くかは問わないわ。警察もよし、孤児院もよし。つまり私はこの子の面倒は見たくないの」「そんなこと言わないで、リーユエ姉さん。あなたはとてもいい人だもの。もう暗くなったし。できれば彼をここに泊めてもいいかな。明日はきっといい方法を考えるから」「ダメよ。あなたとシャオユイという二人のオカマが私の家に住んでるのよ。それだけでも充分よ。またこんな口の利けない子を連れて来るなんてとんでもないわ。あなたはまだ先月の家賃も入れてない。自分のことも保障しかねるのに人を引き取ってまた貸しするつもりなの。警告するわ。自分の身を滅ぼしかねないわよ」「わかった。今夜必ずお金を集めて部屋代を納める」

男の子はアチンのベッドで寝たが朝起きるとおねしょをしていた。アチンは「こんなに大きくてまだおねしょか」と怒った。
男の子はアチンの怒りを察して固まって泣きそうになっている。それを見たアチンは急に可哀想に思いお菓子を取り出し食べて見せた「美味しいぞ、食べてごらん」男の子はややためらいそして食べた。アチンは男の子をぽんと叩くと「わかったか。もうおねしょはだめだぞ」

リーユエは手紙を読んでいた。アチンは部屋代をもう少し待って、と頼んだ「いいわ、今機嫌がいいから。この2日以内にね。アチン、どうするつもり。早くその子をどうにかして。アメリカの旦那が帰ってくるのよ」「アメリカの旦那?いつ?」「来週よ。シャオユイにも言っといて。ふたりともその時は出ていて欲しいの」アチンは了解して出かける間男の子を預かって、と頼み込んだ「いいわ」アチンは外出した。
リーユエは一人取り残された男の子を見て「こっちで遊びなさいよ。ほら飛行機よ。ちびと遊んであげて」と声をかけた。

アチンは師匠に洋服店のライ社長に引き合わせてもらった。アチンの仕事を探してくれたのだ。ライ社長は姿のいいアチンを非常に気に入ったようでしきりと触りたがる。「いい体だね。ウエストのサイズは?はかってあげようか」「ライ社長は洋服をくださるそうだ。あなたは本当に気前がいい。あなたの店の服は高価ですからね。私はちょうど来月娘が嫁ぐのに洋服がないのですよ。話は決まりですな」社長は「君を店に連れて行ってみようかな」と言いながらアチンの太ももを擦り上げた。アチンは社長の腕を掴んで乱暴にテーブルの上に置くと「師匠、じゃ僕これで」と言って立ち去った。ヤン教頭は「子供ですから」と言って笑った。

アチンはリーユエに部屋代を渡した。「これで追い出さないでね。マンゴーも買ってきた。一つはあなた、残りは僕とちびクンが食べるよ」「アチン、ちょっと来て。話があるの」「解ってる。まだ牛乳が足りないって」「牛乳はいいの。座って。話す事があるの」「何か困ったことなの」「あの子ね。チャンニーを怪我させたの。私がいない間にボールを取り合って。あの子がチャンニーを押して机の角にぶつけたの。こぶができたのよ。泣き叫んだわ」「そうだったのか。僕が叩いてくるよ」「いいのよ。私がもう彼を送りだしたわ」「送りだした?どこへ」アチンは声を荒げた「知らないわ。取り乱して警察を呼んだのよ。警察はすぐに来てあの子をつれて行ったわ。これでよかったのよ。あなたに面倒をかけずにすむのよ」「面倒かどうかは僕の問題だ。どうして勝手に決めたんだ」「はっきりしとくわ。ここは私の家よ。私の家に住むなら私の規則は守ってもらうわ」「いいか悪いか僕に相談してくれれば」「相談はいらないわ。今日あの子はチャンニーにこぶを作ったのよ。どうして私に解るの。明日からどんな悪さをするのか」「彼は小さくてわからないんだよ。僕達が彼に教えてやれる」「どうやって教えるの。耳も聞こえないし、口も利けないのよ。頭もよくないわ。あなたは一生あの子を側に置いておくつもりなの。もし万が一彼の両親が探していたらどうするの。彼を警察に連れていっとけば少なくとも家へ帰るチャンスがあるわ」「僕の知ったことじゃない。僕はあの子を探しに行く。もし見つからなかったら、あなたに責任とってもらうからね」「アチン!」

アチンは警察にいって訊ねたが解らなかった。アチンは思った「僕はいくつかの警察を訪ねたが手がかりはなかった。茫然として街を徘徊した。秋の風が吹いていたが背中には汗が流れた。落日を見て僕はたまらない寂しさを感じていた。

シャオユイは林さんのホテルを訪れていた。林さんは日本の家族と電話で話していた。電話が終わるとシャオユイは訊ねた。「上の子が国際商社の試験に合格したんだ」「それはよかったですね。でもあなたはなんだか寂しそうですね」「それは私が家のことを考えているからだよ。私は今までこんなに長く家を離れた事がないんだ。そして長男が初めて社会に出るのに側にいられなかった。とても悪いと思っているのだ」「あなたは世界で一番いい父親ですよ。僕は本当に羨ましい」そう言ってシャオユイはうつむいた。「どうしたんだね」と林さんは心配そうに聞いた。「何でもないんです」林さんはそっとシャオユイの肩を叩いた。

ラオシュウの兄の売春宿では連れてこられて閉じ込められた女の子が化粧をされていた。ラオシュウは小窓からその様子を覗いて見ている。
化粧をしてあげていた女が「ほら、綺麗だわ」と笑う。「花嫁みたいね」と女の子もまだよくわかっていない。別の中年女が「あんたはこの子にはっきり言ったのかい」と口を出す。「何を言うのよ。言えないわ」「あんたはその子の脚を開かせるんだよ。泣きっ面はやめとくれ。お客が嫌になってしまうだろ」言われた女はしぶしぶ「もし誰かがあんたを弄んでもどうにかがまんするんだよ。ちょっとしたらすぐ終わるんだ。解ったかい」女の子は怯えだして細い声で聞いた「あなたたちは私に何をさせるの」「何でもないよ。こうやって大人になるんだ。そうだろ。おや、お前はどうして泣き出すんだい。せっかく可愛くしたのに。泣かないで」壁越しにラオシュウは聞いていた。ラオシュウには女の子がどんな目にあわされるのか解っているのだ。女の子の涙は止まらない。女達は泣くなと大騒ぎだ。
やがて女達が出て行くとラオシュウはこっそり女の子の部屋へ近づいた。そしてハンマーを使って部屋の鍵をこじ開けた。「さあ、ついてくるんだ」
ラオシュウは女の子の手を引っ張って外へ飛び出した。「君はこの道をずっとずっと行くんだよ。遠ければ遠いほどいい。解ったかい。それから絶対家に帰っちゃだめだよ」「何故家に帰っちゃだめなの」「もし家に帰って奴らに捕まったらどうする」「でも私、弟が心配で」「聞いて。僕は君を騙さないよ。ほらこれを持って」ラオシュウは彼女に上着を渡した。そして持っていた金も。「持って。早く。それから警察に知らせないで。でないと兄貴がひどい目にあうわかったかい。早く行って」「ありがとう」女の子は走り出した。
ラオシュウは家に戻った。「待て」ごつい兄貴がラオシュウを呼び止めた。「あいつはどうした」「あいつって誰」「誰たあ何だ」兄貴の拳がラオシュウを襲った。ののしりながらぼこぼこにされる。
「ぶたないで」「逃げるか、立つんだ」「お願いだよ。僕はあんたの弟だ。ぶたないで」「俺はお前を育てた。お前には父も母もない。お前に食べさせ、服も着させた。俺が気にしなけりゃお前には住む場所もない。殴ってやる。俺の心の痛みがわかるか。どう教えたらいいんだ。お前を育てるのは大変だった。判ってるか。お前はどうしてこんな事をする。何故こんな事を俺にするんだ」そう叫びながら兄貴はラオシュウを殴り蹴り首を絞めた。最後にはくたびれてうずくまった。ラオシュウはずっと泣き続けた。

原作:白先勇 監督:曹瑞原 出演:柯俊雄(李父)柯淑勤(李母)范植偉(李青)張捷(幼年李青)楊祐寧(趙英)金勤(小玉)阿鳳(馬志翔)龍子(トゥオ・ゾンファ)楊教頭(丁強)呉敏(張孝全)老鼠(呉懐中)林義雄(林茂雄)李昆(老周)


posted by フェイユイ at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | [薛/子]子(ニエズ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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