2006年02月06日

「リトル・チュン」フルーツ・チャン

リトル・チュン.bmpリトル・チュン2.jpg

香港返還三部作の最後の作品。1部は若者を。2部は中年を。そして最後は子供と老人を描いたということである。

いつもながらの陳果流。中国に返還される前の香港の人々の生活が生々しく描き出される。
主人公リトル・チュンは香港で絶大な人気を持っていた大スターと同じ名前を持つ。彼がブラザー・チュンと呼ばれていたので主人公の少年はリトル・チュンと呼ばれるのだ。
チュンは父が経営する食堂の配達を任される。本当は働くのは嫌なのだが、チュンは幼くして人間には金が必要だと知っている。そして大陸からの移民の少女・ファンが仕事を探しているのを見て「7:3でどうだい」などと持ちかける。ファンも不公平と思いながらも承知する。とは言え、チュンとファンはこうして友達になり、出前を共同で受け持つ事になる。

チュンには家を出て行ったきりの兄がいるのだが、兄は出産の時、医者が来るより先に母のお腹から飛び出してしまったらしい。少しでも早く世の中に出たがったんですよ、と医者は言ったのだそうだ。おばあちゃんはこんな世の中にね、とため息をつく。

チュンの両親は子供を愛してはいるのだが、父親はがみがみ、母親は賭け事ばかり。チュンが日頃、頼りにしているのはおばあちゃんとフィリピン人のメイド・アーミである。アーミは夫に会いたいと願いながらもブラザー・チュンの歌を歌ったり、リトル・チュンやおばあちゃんをかいがいしく世話したりする優しい女性だ。だが、したたかな香港人を批判するのも忘れてはいない。
おばあちゃんはチュンに色々な事を教えてくれたりわがままを聞いてくれる。
チュンは物語りの後半でその二人に別れを告げられる。おばあちゃんは亡くなり、アーミは国へ帰ることになったのだ。チュンはこうして子供から大人への道を歩んでいくのだ。

それにしてもチュンとファンが金儲けの事も忘れて無心に遊んでいる場面はとても微笑ましいものだ。小さなチュンが後ろにファンと前にファンの妹を乗せて自転車をこぐシーンはなんと逞しいではないか。
が、その後でファンが言う言葉がある「中国では綺麗な星が見えたけど香港ではダメね」チュンは負けん気を出してトラックの幌の破れから街の光が入るのを見て「ここだって星があるよ」なんて言い返す。その光は何とも物悲しいものなのだ。ファンは答えない。

また、チュンはファンのために店の菓子を盗んでいたのを父親に見つかり家出する。探しに来た父親の剣幕に恐れをなしたファンはつい「出てきて」と叫んでしまう。チュンはお仕置きに往来でパンツを脱がされて立たされる。恥を忍びながらチュンは大声で歌う「生まれる時代を間違えました」
チュンの父親は「あの女の子は不法侵入者だ。つきあうな」と怒鳴りつける。

そしてとうとうファンは不法侵入者として送還させられる。その前にファンは彼女の父親に託してチュンからもらった「たまごっち」と手紙を届ける。手紙には「私は不法侵入者の子供と言われるのが大嫌い」とあった。
幼い子供が「不法侵入者」と指差されて穏やかでいられるはずがない。明るく働き者のファンのたった一言だけの手紙が私は辛かった。
ファンたち母子が警察に捕まるのを見たチュンは身体に不釣合いな大人用自転車で彼女らを連れ去った車を追う。小さく細い身体で懸命に大きな自転車をこぎながら香港の雑踏を走り抜けるチュン。彼が追いかけたからといって何かできるはずはないのだが。不覚にも涙がこみ上げてくる。仲のよい子どもたちを裂いてしまうものは何なのか。
運命は皮肉だ。チュンがやっと追いついたと思った車はチュンの家族をいつもいじめてきた暴力団の男が運ばれていた救急車だったのだ。男は「お前だけだ。嫌われ者の俺を心配してくれたのは」と感動して泣き出す。チュンはもう会うことはないファンの名前をつぶやくだけだった。
チュンと同じ名前を持つ大スターブラザー・チュンの訃報が伝えられ香港は悲しみに沈む。こうして時代は古き者から新しき世代であるリトル・チュンへと受け継がれたのだった。

映画の最後に第1部・2部の主人公であるトニー・ホーとサム・リーが通行人として登場し同じ場面に3人の主人公が集結するのだ。これは監督のお遊びなのだが、香港返還3部作の最後を締めくくりとしてふさわしいものであった。

監督:フルーツ・チャン 出演:リトル・チュン… ユイ・ユエミン/ファン…マク・ワイファン/ギン(チュンの父親)…ゲイリー・ライ/おバアちゃん…チュ・スーヤウ/アーミ(ギン家の家政婦)…アーミ・アンドレス/ホイおじさん(街の長老)…ヒュー・ホイ/デビット(ホイの長男)…ロビー/ケニ(ホイの次男)…テオ・チャン


チュンの店から金を巻き上げようとするデビットに対し、チュンは復讐を考えるそれは彼が注文したレモネードに自分のおしっこを混ぜて特別カクテルを作ると言うものだった。ばれたら逃げようと身構えると。デビットは「旨くなったな」などと言う。そしてその後の使用済みタンポン入りレモネードは陳果ならではでしたね。


posted by フェイユイ at 00:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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