2006年02月14日

「ある殺し屋」市川雷蔵

殺し屋.jpg

まったくこういうマジなハードボイルドがメジャーで存在し得る時代だったんだろうか。極端に音楽も効果音もなく派手な銃撃戦やら残酷な場面もなく淡々と映像が映し出される。
途中まで主人公・塩沢の素性が知れず行動が謎のまま進行して行くのだが、全体にシンプルでドライな作りなのだ。

現代劇のため、市川雷蔵も目立つ人物でもない。それどころか小さな小料理屋を営む主人という職業を持ち、自ら魚もさばく。その手つきは鮮やかではあるが。その地味な男が凄腕の殺し屋だと言う。
ひょんなことから市川雷蔵演じる塩沢と知り合い、「結婚してよ」とせがんでくる妙な女・圭子に野川由美子。調子がよくて明るくてゴージャスなボディラインに可愛い顔、こういう映画には不可欠な女性である。
殺し屋・塩沢に仕事を依頼するヤクザの片腕・前田に成田三樹夫。こわもてのイメージだが、ここではまだ半人前で塩沢に憧れを抱く若造である。

塩沢の武器は針。これで依頼された標的の首の後ろをぐさりと刺してしまうのだ。
なぜ塩沢がこのように強いのか。映画では言葉として説明はされない。ただ映し出される写真と「仲間は皆死んでしまった」と言う言葉で彼が戦争の中を生き抜いてきた男なのだと言う事がわかる。
塩沢が前田や圭子と組んでヤクの密売を横取りするために選んだ隠れ家は墓場がすぐ側にあり崩れ落ちそうで壁も薄汚れたアパートである。
塩沢は表情に乏しくセクシーな圭子に言い寄られても全く指一本触れようともしない。そしてどんな事にも怖れる様子もない。まるですでにこの世の人間ではないかのような凄みがあるのだ。
ヤクザの親分(小池朝雄)が塩沢に殺しの依頼をする時、上空を飛行機が飛ぶ。依頼を断ろうとしていた塩沢はその音で死んでいった仲間を思いだす「皆純粋な若者だった。祖国のためと信じて死んでいったのだ」そう考えた塩沢は急に殺しの依頼を受けるのだ。

塩沢がまたなぜこのような仕事を請けているのかもよく判らない。誰に捕まる事も騙される事もなく塩沢は旅立ってしまった。

市川雷蔵の極めてストイックな殺し屋に魅了されてしまった。そしてこの映画のスタイルにも。どこにも金をかけているわけでもない。弁当だって新聞紙にくるんで持ち帰る。それが当たり前だったんだろうけど。この力強い構成力・脚本。感心するばかりだ。

監督:森一生 原作:藤原審爾 脚本:増村保造、石松愛弘 企画:藤井浩明 撮影:宮川一夫 音楽:鏑木創 美術:太田誠一 編集:谷口登司夫

出演:市川雷蔵、野川由美子、成田三樹夫、渚まゆみ、千波丈太郎、松下達夫、小林幸子、小池朝雄、伊達三郎、岡島艶子
1967年製作

小料理屋を手伝っている女性が小林幸子なんだけどちょっと気づきませんでしたね。


posted by フェイユイ at 23:16| Comment(4) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今日午前中の10時頃にNHKで作家の村松氏が出てきて雷蔵の番組やってました。

なかなかに奥深い人物のようです。

おらも見てみやうかな。
Posted by fince at 2006年02月15日 10:43
評判どおり確かにかっこいい役者さんです!
私ももう少し眠狂四郎シリーズ観るつもりです。後のが面白そうなんで。
ほんとは「陸軍中野学校」を観たいんですけどDISCASさんが置いてくれてないんですよー。リクエストもしたんですがねー。
Posted by フェイユイ at 2006年02月15日 15:28
これは、数年前にスカパーで見ましたよ。最初は成田三樹夫がでてる!って思ってみてたら、小料理屋のオヤジに弟子入り志願してるので何でだろうって見てたら、小料理屋のオヤジが殺し屋で市川雷蔵でした(汗)アパートのシーンは、結構ドキドキしてみてました。
Posted by 重剣 at 2006年02月15日 22:52
私も市川雷蔵さんより成田三樹夫さんが懐かしくて(笑)
小林幸子さんには気づきませんでした。

これはかなりの秀作ですよね。凄いなあ、昔の映画って。
Posted by フェイユイ at 2006年02月15日 23:26
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