2006年02月18日

[薛/子]子(ニエズ)第十七集 安楽郷 前半

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「安楽郷」をオープンしてにこやかな面々。左の写真、左からアチン、ラオシュウ、楊教頭、シャオユイ。

楊教頭たちが作った「安楽郷・アンルーシャン」がオープンした。
中ではアチン達が働き、新公園に集っていた同志達がお客として集まり繁盛した。

お金持ちの盛公もやって来た。楊教頭が「シャオユイ、盛さんがおいでだ。早くブランデーを」シャオユイは急いでブランデーを運んでくる。
「金海、これで君のかねてからの願いがかなったな」「全て盛さんのおかげです」「どうぞ盛さん」盛公には連れがあった。「紹介しよう、こちらは龍王爺。翠華号の船長だよ」「翠華号、それは凄い」と楊教頭は感心する。「ボーチー湾から日本へ石油を運ぶ船ですね」「ホントに」とシャオユイは目を輝かせる。「龍さん、私はシャオユイです。どうぞよろしく」と日本語で話しかける。龍王爺も「どうぞよろしく」と答えた「楊師父、どこからこんな綺麗な子を探してきたのだね。とても綺麗な目をしている。忙しくなければ、座って話でもしよう」
すかさず楊教頭はシャオユイに目配せしてこっそり「この魚を逃がすわけにはいかんぞ」「師父、安心して。僕は龍王爺の玉をしっかり捕まえて放さないから」「よし」
シャオユイは龍王爺船長の横にすわりブランデーを注いだ。「どうぞ」龍王爺船長はすぐには受け取らず「飲ませてくれないか」これにもシャオユイは全くひるまず「いいですとも。コップで飲ませましょうか、それとも口移しに飲ませてあげましょうか」「この子は面白いね」龍王爺船長はすっかりシャオユイが気に入った様子だった。

アチンの独白「興奮と共に感情もかきたてられた。またアルコールが入るとこの巣窟の中は皆がかたまり、あるいは対になり互いに打ち明けあった。人の道から外れた隠された苦しみを見せ合ったのだ。
たとえあらわにできない苦痛や哀愁を持ってはいても互いの笑い話にしてまたは楽曲に閉じ込めてしまったのだ。

別の日、楊教頭はアチンを連れてフー老爺子の家を訪ねた。門を開けたのは老爺子自身だった。彼の身の回りの世話をしている呉さんは市場に行く途中転んでしまって足を脱臼してしまったのだ。医者によると彼女は一ヶ月は休養をとらないといけないらしい。
楊教頭はご挨拶に伺ったのです、と言った。老爺子は従ってきたアチンに「仕事はどうだね、大変だろう」「いいえ、老爺子。もし時間があったらどうぞ老爺子もおいでください」「思ってはいるのだが、年をとるとうるさいのがどうもね。さ、中に入って」
応接間に入るとテーブルの上が埃だらけだ。呉さんがいない数日で酷く散らかってしまったのだ。楊教頭は断ろうとする老爺子を説得しながらアチンに掃除をさせた。「ありがとう、アチン」「何でもありませんよ、老爺子」楊教頭は「そうだ、このままじゃ不安です。アチンは若いし、頼りになります。彼をここに泊めて呉さんの代わりにお世話をさせましょう」「いけないよ。アチンは夜はまた仕事だ」「18・9歳の子供です。牛のように強いのですから大丈夫ですよ」「煩わせるわけにはいかない。気持ちだけ受け取っておくよ」「実はアチンは最近、大家に追い出されたのですよ。住む家がないんです。老爺子、もしあなたが嫌でなければ、この可哀想な子を泊めてやってください」「アチン、本当なのかい」アチンは突然師父に言われた言葉に合わせて「そうです、老爺子。大家さんが最近家賃を上げたんです。僕は払えなくて。もし老爺子が僕を引き取ってくださればとてもいいのですが」「そうなのか。よし。ただ、君のような若い人が私のような老いぼれとこの部屋にいるのは慣れないだろうよ」楊教頭は「この子はずっと家を離れてあちこち放浪しているのです。もし老爺子がここにおいてくださるなら彼は幸運ですよ。アチン、お礼を」「ありがとうございます、老爺子」

アチンはリーユエの家へ戻って引越しの準備をした「君のハーモニカ、忘れないで」とシャオユイは差し出した。アチンはそれを受け取った「ありがとう」「よし、いこうか。どうしたの。苦海から離れたくないのかい。大きな家に住むんだろ。離れがたいかい」「いや、行くよ」
アチンが家を出ようとするとチアンニーを抱っこしたリーユエが立っていた「私は他人じゃないからね。また戻ってきてね」「わかってるよ」

老爺子はアチンを部屋に案内した「この部屋はもともと、私の息子のアウェイが住んでいたのだ。これらのものは彼がのこしていったものだよ。必要なら使っていい」そして押入れから洋服を取り出してアチンに着せた。「アウェイの服は大部分、他人にやってしまって、いくつかが残っているだけだが、この冬には充分だ」「ありがとうございます」「アチン、ここに越してきたのだから自分の家のようにして畏まることはないよ。もう遅い。風呂に入って早く寝なさい」

アチン独白「新しい場所に移って眠れなかったのかもしれない。壁越しの部屋の老爺子もゆっくり眠ってはいなかった。2・3回起きてはトイレに行った。足音が屋外の蛙の鳴き声を伴って近くから遠くへ遠くから近くへ聞こえた。母親が家を出てから僕はいつも暗闇の中で、父が行ったり来たりする足音を聞いた。切実で重々しく閉じ込められた獣のようだった。鉄の檻の中で止むことなく回り続けているのだった。

朝、アチンが起きてくると老爺子はすでに目覚めて応接間に座っていた。アチンは朝食の準備をした。その様子を見て老爺子はいつも台所をやっていたのかい、と聞いた。
「僕は以前夜間校で勉強していてたのです。ほとんどのご飯は僕が作っていました。父は面が好きでよく肉醤をちょっとまぜて食べました」
老爺子は聞いた「君のお父さんは抗戦の時、団長だったのだね」「でも台湾に戻ってからは解雇されたのです」「どこの兵団だったか知ってるかね」「よくは知りません。ただ父が言ったことは覚えています。彼らの兵団の司令はチャンガンと呼ばれていたようです」「チャンガン兵団か。抗戦の時はとても目だっていた。特に長沙での戦いは素晴らしかったが、あの兵団の運勢はよくなかった。君の家には他には誰がいるのだね」「いません。母と弟は亡くなったのです」「君の師父が言っていたが、君達、父子はうまくいっていないのだな。君の父親は怒っているところなのだ。彼の怒りがおさまったら、戻って会ってみるといい」

「安楽郷」で開店の準備をしていた。
「アチン、老爺子の家に住んでうまくやっているか」「はい師父。老爺子はとてもよくしてくれます。彼の息子の部屋に住まわせてもらってます」「ほら見ろ。老爺子の所に住めば、食事も住居もあり、天国に住んでいるようなものだ。だろ。お前はよく気がきくからいつもまめにしてあげて、師匠の面目がつぶれるようなことはしないでくれよ」「解りました、師父。僕が出る時は床を拭き終わり、台所は洗い終わり、昼ごはんも僕が作りましたよ」「私はお前に真心を持ってすることを望んでいるよ。よくあの方に仕えて夜寝ている時死なないように眠りを浅くしてくれ」「解りました」「老爺子がお前に不満があったらすぐに取り替えるからな」「はい」ここでシャオユイが割って入って「彼に代わりに僕を行かせてよ」「お前はダメだ。お前は口がうますぎる。お前は盛さんの機嫌を取ってこい。老爺子は生真面目な人だ。お前が取り入ってはいかん」「真面目な僕より誰が真面目か言ってくださいよ。僕がもし老爺子の面倒を見たら、息子より親孝行ですよ」「わかったわかった。お前にはそれより重大な任務がある。あの龍王さんには価値がある彼は来るたびにウイスキーをたくさん召し上がる。肴はおまけしておくんだぞ」「解りました」アチンは「何故彼はそんなに特別なんですか」シャオユイは「君は師父の計算がわからないんだよ。彼は僕の色仕掛けに頼って龍王さんに我が安楽郷の洋酒の密輸を頼もうとしているんだよ」これには師父も驚き「お前・・・お前はそんなことを。わかっていたとはな。凄いもんだよ」そして楊教頭はラオシュウに床を磨けと叫んだ。


posted by フェイユイ at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | [薛/子]子(ニエズ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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