2006年02月21日

[薛/子]子(ニエズ)第十八集 戻り道 前半

シャオミンが新公園を歩いている。だが酷く憔悴しきった様子だ。すれ違う人に「楊教頭を知りませんか」と聞いてみるがそっけない答えが返ってくるだけ。なけなしの硬貨で電話をかけてみるが誰も出てはこない。シャオミンは博物館の前にうずくまりつぶやいた「アチン、君達は一体どこにいるんだよ」

アチンとラオシュウは「安楽郷」で開店の準備をしていた。シャオユイが慌てて駆け込んでくる。アチンが「どうしたんだい、今頃やって来て」「まだ八時じゃないよ。何せっついてんの。僕は授業を受けてたんだよ」「紅い雨が降るよ。ワン・シャオユイが授業を受けるなんて」「人を見くびってるな。僕は料理の勉強をしてるんだ」「君が料理を勉強してどうするの」とラオシュウ。「一つの技を学んでいれば年を取って色香が無くなり人から求められなくなってもご飯が作れるからさ」「何言ってるんだい。早く話せよ」「解った。時期が来たら話そうと思ってたんだ。どうやら龍王爺の船で料理人を募集しているんだ」「それで船に乗ろうとしているのかい」とアチン。「君はねぎとにんにくの違いすらよく解ってないじゃないか。料理人になれるのか」「ちょっと聞きなよ。先週、龍王爺が僕に、料理人が東京で船を逃げ出した話をしたんだ。そういうことはしょっちゅうあるらしい。新宿には中華料理店があるらしいんだ。そこの社長も彼の船から逃げ出したんだよ」「君にそんなことができるのかい」「他の奴ができるんなら僕にだってできるだろう。東京に行ったら僕は誰よりも早く逃げ出すよ」「君はまだあきらめていないんだね」「僕が何故あきらめるのさ。それは僕が死んだときだよ。僕は焼けて灰になっても幽霊になるさ。僕の心は死なない。ふわふわと太平洋を渡って行くよ。林さんが僕を日本へ連れて行けなくて悲しかったよ。それで君は僕があきらめたと思っていたのか。チャンスが来たんだ。上は刀の山、下は油鍋でも怖くなんかない。ワン・シャオユイは驚かないよ。来月僕は盲腸を切るよ。龍王爺は船に乗る船員全員に盲腸を切らせているんだ。僕はもう決めた。彼が僕を船に乗せたいと思っているんだ。すぐにでも盲腸を取り出すよ」アチンは「君が行ってしまったらお母さんはどうするの」「どの道、僕はずっと彼女の側にはいないもの。もう慣れているよ。でも君達、見ててくれよ。僕は東京で大金持ちになってやるよ。僕があのもうろくジジイを探しだせるかわからないけど、きっとママに会わせてやるんだ。僕は彼女に何年か幸せな生活を送らせてやるんだ、彼女の一生が終わるまで。それが日本へ行く最大の目的だよ」「よし、早く準備しよう。でなきゃ師父がすぐに来るよ。この様子を見られたらまた怒鳴られる」そこへ何人かの客が入ってきてアチン達は急いで応対を始めた。

シャオミンは安宿で男相手に身体を売った。
疲れて眠るシャオミンに男は金を放って出て行った。売春をしてもらった金をシャオミンはぼんやりと眺めた。

安楽郷に若者が入ってきてビールを頼んだ(この若者がチェン・ボーリンです)アチンはまだ未成年だろうと言う。シャオユイは金があればいいさ、30元ですというと、若者は高いから安くしてくれないかと言い出す「そしたらとっておきのネタを教えてやるぜ。・・・君達の兄弟を見たよ」「何の兄弟だ」「この前、腕を切った奴さ」「何だって。シャオミンの事か」「何日か前、新公園に行った時にね。凄く汚れていたよ。浮浪者のようだった。僕がここに来る時、男と一緒に安宿に入ったよ」「本当か」「勿論本当だよ」アチンはすぐシャオミンを迎えに行くと言って出て行った。

シャオミンは眠っていた「シャオミン。いつ戻ってきたんだ。服を着て帰ろう」「僕にかまわないでくれ」「なぜこんな自分を弄ぶようなことをするんだ」「いけないの。自分のことは自分でやるよ。ほら、2百元。寝てるだけで何もしなくていいのに、何がいけないんだ」アチンはシャオミンを叩いた「帰るんだ」「チャンさんは僕がいらない。父さんも僕がいらない。僕はどこへ行けばいいんだ」泣き出すシャオミンをアチンは優しく抱き寄せた。

アチンはシャオミンを老爺子の家へつれて帰った。傷ついたシャオミンの寝顔を見て老爺子はそっと頭を撫でるのだった。

シャオミンも「安楽郷」で働き始めた。アチンがジュースや酒を作りシャオミンはそれを運んだ。シャオミンがふと見ると店の端にチャンさんがいるではないか。チャンさんもシャオミンがいるのに気づいた様子だ。シャオミンはチャンさんが気になってしょうがない。アチンもチャンさんがシャオミンのさばに寄って話しかけるのを見た。だがシャオミンは黙ってカウンターへ戻ってきた。

老爺子は今日も孤児院へ行こうとしていた。アチンはついてこなくていいですか、とたずねる。「この3年間ずっと行きなれたよ」「3年間毎週行っているのですか」
雷が鳴り雨が降りそうだった。アチンは老爺子に傘を渡した。

夜には本降りになった。雨の中、安楽郷にロンズがやって来た。
「アチン」「ワンさん」「君がここにいると最近知ったんだ」「何か飲みますか」「そうだね。じゃブランディをくれないか。アチン、最近どうしてるの。ずっと君を探していたんだ。君の事が気になって。ここの酒はいいね。仕事はどうなの。」「なかなかいいですよ」「バーテンの仕事は面白いかい」「ええ、おかしな人もいるし」「そうか、僕もニューヨークで2年間バーテンをやっていたよ。客は年取った浮浪者か家出した少年だった」「タバコは」「いいね。アチン、あの日、何故黙って出て行ったの。僕の言ったことが何かいけなかったかい」「いいえ」「じゃ」「僕達は友達で充分だと思ったんです。あるいは兄弟のような感じでも」「僕達はそんな風じゃなかったのかな。君は僕が本当に君の事を好きだと知っているだろ」「知っています」「じゃなぜ、何故なんだ」「僕が彼じゃないから。僕は、あなたがアフォンを守りたかったのを知っています。あなたがアフォンの面倒をみたかったんだと。でも僕はアフォンにはなれません」
ロンズの顔に全てを理解し愕然となったことが見えた。何も言えずロンズは席を立った。アチンはロンズが傘を忘れて行ってるのに気づき後を追った。どしゃぶりの中をロンズは帰りかけていた。「ワンさん。あなたの傘です」ロンズに傘を渡し、アチンは再び土砂降りの中を店に戻った。

店に戻りアチンは歌を歌った。ロンズへの思い出を振り返るように。


posted by フェイユイ at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | [薛/子]子(ニエズ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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