2006年02月25日

[薛/子]子(ニエズ)第十九集 前半

シャオユイはつぶやいた「安楽郷の幸運も続かないようだな。君達がどうするのかわからないけど、僕はもう決めている。龍王爺のツイファ号が出航スルのを待って僕は必ず行くよ。でも君は一番幸運だよ。老爺子の庇護を受けているし、何の心配もないさ」そういわれたアチンは「そうじゃないよ。僕と老爺子は仲がいいんだ。でも呉さんの脚の怪我がよくなったら悪いけどまたあそこに戻らなきゃ」シャオユイは「シャオミン。君はあの暴君について嫁になるのかい」シャオミンは黙ったままだ「お前は頑固だな。解ったよ、早く片付けようぜ」

シャオミンがチャンさんの家へ帰ると応接間が散らかっている。シャオミンが片付け始めると浴室から音がした。シャオミンが様子を見に行くとそこにはチャンさんが倒れていた。顔が引きつれたように歪んでいる「チャンさん、どうしたの」

チャンさんは入院した。妹さんが看病にやって来た。兄が自分の体を大切にしないことにグチをこぼす。「自分の身体を大切にしようとしないのだから」
そこへシャオミンが病室に入ってきた「あなたがシャオミンね。私は彼の妹です」「知ってます。僕はあなた方が一緒に写った写真を見たので」「私の兄があなたにお世話になってご迷惑をかけました」「いいえ。チャンさんはいつも僕の面倒を見てくれています。こんな事は当然です」「私は先刻彼に話したばかりなの。ずっと前からこんな風ではいけないと言っていたのよ。彼は聞かなかった。見て、今自分がどうなっているのか、病気になって他人に迷惑をかけている。ほらシャオミンがあなたにお粥を持ってきてくれたわ。ありがとう。食べるかしら」妹はチャンさんの口におかゆをぞんざいに運んだ。たちまちチャンさんはおかゆを噴出してしまう「きゃあ」おかゆが一面に散らばり妹は「まったくあなたって人は」ハンカチで辺りを拭きながらシャオミンを見て「私手を洗ってくるわ」
シャオミンはチャンさんのベッドを綺麗にしながらささやいた「妹さんは悪気はないんですよ。気にしないで。僕が食べさせてあげますから」シャオミンが食べさせるとチャンさんはこぼさず食べたが「これじゃ食べにくいんじゃないですか。位置を変えましょう」と言って食べやすいようにチャンさんの身体を持ち上げた。
妹は洗面所から戻るとシャオミンが丁寧にお粥をさましながら兄の口に運ぶのを見た。兄が自分の時とは違って美味しそうに食べているのを見た。

シャオミンと妹さんは病院の外へ出た「先に帰ってね、送れないけど」「かまいません」「これを持って」とお金の入った封筒を渡す。シャオミンが断ろうとすると「もっと必要なら私に言って。取っておいてちょうだい。恥ずかしいけどこれが妹としてできることです。彼は性格が悪いわ。あの人と付き合うのは大変でしょう。その上、あんな事になって。許してあげて」「お姉さん」「何も言わなくていいわ。私は解ってます。あなたはいい子ね。うれしいわ。あなたのようないい弟ができて」
彼女は部屋に戻った。シャオミンは切った手首の傷にそっと触れた。

シャオミンがチャンさんの看病をしている時、アチンが訪ねてきた。チャンさんの顔は動かず歪んでいる。身体も動かないようだ。
かいがいしくチャンさんの世話をするシャオミンをアチンはじっと見つめた。

シャオミンはアチンに訴えた「僕がいけないんだ。彼の身体をよく注意していなかった。数日、彼は頭が痛いと言っていたのに。よく聞いてなかった。酒を飲みすぎるとは思っていたけど。こんなに大変な事になるとは思わなかったんだ」「君のせいじゃないよ。彼自身が君の忠告を聞かなかったんだ。君がいつも責任を負う事はない。彼がこんな風になって君はどうするつもりなんだ」「ずっと面倒をみていくよ」「万が一彼が一生よくならなくてもかい」「大丈夫だよ。彼はまだ若いもの。きっとすぐによくなるよ」「君って」アチンはあきれた「彼の家族に面倒を見てもらったほうがよくないか」眠っていたチャンさんが目を開けたのをシャオミンはすぐに気づき「チャンさん。何か欲しいの。水が飲みたい?それとも具合が悪いの。看護士さんを呼んでこようか」が、チャンさんはシャオミンが優しく差し出したコップを思うように動かなくなった手で弾き飛ばした。水がベッドにこぼれた。「そんな風にしないで」チャンさんは動かない身体をもどかしく思うのか、横たわったまま発作のように激しくベッドを揺らし叩き続け泣いた。そんなチャンさんの手をシャオミンはしっかりと握りしめて涙をこぼすのだ。
アチン独白「彼らを見ていて僕は知った。僕はもうシャオミンに何も忠告すべきではないのだ。将来彼らがどんな状況になろうとかまわないのだ。シャオミンはついに彼の心からの望みを達成したのだ。シャオミンは愛する人を抱いているのだから」

シャオユイはアチンを連れてお母さんの家を訪れた。母さんは寝転んでいた。
「母さん」「ユイちゃん。おかえり」「おばさん」「よかった。夫は出て行ったところよ」「いたって怖くはないさ。母さん、僕は日本へ行くよ」「冗談を言ってるの。日本へ行くって。何時?」「あさっての朝。この前、龍王爺の話をしたよね。彼の船で行くんだよ。コックになるんだ」「船で働くのは大変よ。こんなに痩せているのに大丈夫かしら」「大丈夫。安心して。一度行くだけだよ。日本についたらすぐ逃げるのさ」「あなたって。そんなこと言って。もし逃げられなければ。日本の政府に捕まってしまったらどうするの」「大丈夫。龍王爺が段取りをつけてくれるんだ」「彼はあなたが逃げるのを知っているの?彼はあなたの船長じゃないの?」「僕は事情を真剣に話したんだ。勿論苦肉の策を施したよ。彼は僕が日本で父さんを探すのを知っている。そして僕が船を逃げ出すのを手伝ってくれるんだ。そして僕に知り合いの店の仕事を紹介してくれるんだよ」「この子ったら。何故そんな大切な話をこんな間際に話すの」「僕がもしあんまり早く話したら、あなたを捨てられなくなる。行きたくなくなる。母さん、必ず身体を大切にしてね。僕は日本へ行ったらすぐ手紙を書くよ。僕の心配はしないで」「電話にして。手紙は遅すぎるよ。電話代がもしあんまりかかったら、ここにつけるのよ」「わかった」「あなたの声を聞いたらやっと安心できるわ」「わかったよ」シャオユイのお母さんは涙をこらえて机を探り「お金、少しだけどあなたが私にくれたものよ。あなたのためにとっておいたの。持っていって少しずつ使ってね」「いらないよ。持っているって」「外に出るときはお金がいるものよ。万一何かあった時、誰があなたを助けるの」そしてまた机を探って「このネックレスは父さんが私の結婚の約束にくれたものよ。王秀子と彫ってあるわ。それと彼・中島正雄の名前よ。持って行って。もし彼を見つけたらこのネックレスを見せて。彼はあなたが解るでしょう。もし見つけ切れなかったら売りさばいてちょうだい。旅費にして帰ってくるのよ。落ちぶれてしまわないでね」「母さん、泣かないで。あなたが僕のために泣いたら、置いていけなくなる」2人は抱き合って涙にくれた。アチンは廊下でそんな2人の泣き声をじっと聞いていた。

「岬まわるの小さな船が、生まれた島が遠くになるわ。入り江の向こうで見送る人たちに別れ告げたら、涙が出たわ。島から島へと渡っていくのよ。あなたとこれから生きてく私。瀬戸は夕焼け。明日も晴れる。2人の門出、祈っているわ。2人の門出、祈っているわ」
(あの「瀬戸の花嫁」をシャオユイが歌います。2番でしょうか。歌詞が違うところがあるかも知れませんが、シャオユイはこう歌っています。何の身寄りもない若いシャオユイが日本へ行こうという決意を歌ったのです。それを思うと聞いていて涙がこぼれます。とても綺麗な唄い方でした)
安楽郷で、師父とアチン・ラオシュウ・シャオミンを前にシャオユイが「瀬戸の花嫁」を歌った。唄い終わるとアチン達が立ち上がってシャオユイに近寄り心からの友達である4人は固く抱きあうのだった。強い絆で結ばれていた仲間の一人が今、旅立とうとしているのだった。
それを楊教頭はじっと見つめていた。

翌々日、シャオユイは僕達の送迎を拒絶して一人基隆港から日本行きの船に乗った。


posted by フェイユイ at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | [薛/子]子(ニエズ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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