2006年02月27日

[薛/子]子(ニエズ)第二十集・完結 旅立ち 前半

老爺子はアチンの家を訪ねた。杖をつきたどり着いた時には大きく息をしていた。
家にはアチンの父親が一人本を読んでいた。

「どなたかおられますか」「誰ですか。何の用でしょうか」「私はあなたの息子さんのために来ました」途端に背を向け「私には息子はいない。間違いでしょう」「何を言われる。アチンがどんな間違いをしたとしても彼は永遠にあなたの子供だ。私を中に入れてくれませんか」「あなたは何者ですか」「私の名はフー。これが名刺です」「フー・チョンシャン。ひょっとしてあなたは・・・」老爺子が微笑むとアチンの父はさっと敬礼した。老爺子は軍隊の上官なのだった。老爺子はその手を取って握手をした。

老爺子は中に通された。壁には女性と男の子の写真が掛けられている。「尊夫人とディーワーですな。アチンが私によく話して聞かせてくれましたよ。家の中のことを」「息子はどうしてあなたの所にいるのですか。話せば長くなる。しかし彼には大変世話になっている。ここの所、私は体の調子が悪くて彼が大変よく世話をしてくれるのです。あの子の年齢には珍しい。善良で礼儀正しい。彼の父親であるあなたが威厳を持っておられたのですな」「あなたはそんな話をするためにわざわざ来られたのですか」「勿論、それだけではない。私達は軍人出身でもある。はっきり言おう。私はあなたに彼を許してやって欲しい、とお願いしに来たのです。私はよそ者だ。本来は他人の家の事に干渉すべきではない。しかし私は彼に対して忍びないのです。毎日、恥じ入っているのですよ。それであなたは・・・」「おそらくあの子があなたに来るように言ったのですな」「私はこっそり来たのです。リーさん。私の話を聞いてください。アチンは結局あなたの肉親なのです。彼は間違いを犯しました。あなたは彼を打ち、罵った。どうして許さないのですか。父子の愛は全てを帳消しにすることです」「彼が犯したのはただの間違いではない。最大の屈辱なのだ」「彼はすべきではない愚かな行為を学校で犯してしまった。しかしあなたは彼がこの道を選んだのだとは思いたくなかったのだ、どうしても」「あの子は勉強を怠けていた。十数年間、私は全力で彼の面倒を見て育てた。私は一切の望みを彼の上に置いた。あの子はなんという下劣な事をしたのだろうか。我がリー家は最大の屈辱を受けた。私は死んでも彼を許す事はできない」「あなたの感じたことはよく解る。しかしもしそれが彼の血の中にあるのなら彼がそうした事も許すべきではないか」「将軍、どうぞ、自重してください。あなたを招き入れて今まで私はあなたを私の長官として尊重しました。あなたへの遠慮でこらえてきました。しかしあなたがずっとそのような屁理屈を言われるなら、私はあなたに疑いを持つではないですか。あなたも・・・」「アチンと一緒かと。違う。私は違う。私が彼らの世界をよく理解していれば、十二年前、私は唯一の息子の尊い命を失う事はなかった。彼は前途が錦のような軍官になるはずだった。なのに軍営の部屋でアチンと同じことをやったのだ。その時の私の驚きと苦しみはあなたと比べても軽くはないはずだ。私はあなたと同じく彼を許さなかった。その上、手紙を書いた。厳格な言葉を選び、彼を叱り付けた。彼が最も脆くなり、私の支えを必要としている時にすら、彼の電話を切ってしまった。結果、私の58歳の誕生日、彼はピストルで自殺した。リーさん、我々は2人とも傷心の父親だ。しかし私はあなたより望みを絶たれている。結局あなたの息子はまだこの世の人だ。しかし私は一生心残りを抱いていくのだ。私には解る。あなたがすぐにアチンを受け入れると自分を納得させる事はできないだろう。しかし私は心からあなたにお願いしたい。彼を理解するよう、試してくれ。彼は18歳だ。すでに母親と弟を失っている。あなたはかろうじて残っている身内だ」「もう話さんでください。どうぞお帰りください」アチンの父は背中を向けてしまった「君が幾多の戦場で立てた手柄は少なくない。ただ一回の敗戦のために軍職を辞めさせられた。あなたの心はきっとバランスをとれなくなったろう。もしあなたが一生忠誠を尽くす国家があなたを頼る者のない孤臣に変えたと思うなら、あなたはまたあなたを敬っているアチンを許されることのない罪人にする事はあるまい」そう言うと老爺子は再び外へ向かって歩き出した。残されたアチンの父は忍び泣いた。

帰り道、老爺子は苦しい息をしていた。バス停に向かう途中、突然老爺子は胸を押さえ倒れてしまった。

老爺子は病院で目を覚ました。側にはアチンが付き添っていた。「老爺子、目が覚めましたか。看護師を呼んできます」「いいんだ。側に座ってくれ。私はどのくらい寝ていたのかね」「まる一日です。あなたが道端に倒れて、昏睡状態でした。何人かの心ある人があなたを見つけて送ってきてくれました。老爺子、どうして一人でロンジアン街に行ったのですか」「なんでもないよ。何時だね」「もうすぐ2時です」「私はリー院長に約束した。今日の午後、子供達の面倒を見に行くと」「焦らないで、老爺子。あなたの身体がよくなるのを待ってください。僕がまたついていきますよ」「私はもうしばらく彼らに会っていないのだ。私は安心できない。様子を見てあげなければ。アチン、君が代わりに行ってくれないか」「でも師父からあなたの面倒を見なさいと
言われているのです」「看護師がいるよ。行ってくれ霊光孤児院では絶対に私が入院したとは言わないでくれ。ただあの子達にはフーじいちゃんは何日かしたら来るからと言ってくれないか」「わかりました」「じゃその果物を持って行ってくれ」「はい。老爺子、行ってきます」出ていこうとするアチンを老爺子が引き止めた「アチン。アウェイの服は君にぴったりだな」アウェイの上着を着ていたアチンはにっこりと微笑むと部屋を出た。
廊下を医師が歩いていた「ディン先生。老爺子が目を覚ましました」ディン医師は立ち止まって側の看護師に病人の血圧を計るように言った「先生、老爺子の今度の病状はどうなんでしょうか」「正直に言うと、老爺子の病気は今回気をつけねばならない」「とても重いのですか」「彼の心臓は衰弱していくばかりなのだ。また心筋梗塞の症状もある。いつでもショックを起こしかねん。今回気を失って倒れた。幸いすぐ病院へ運ばれたがもし少しでも遅かったらとても危険だった」「じゃ老爺子は」「まだ言い難い。心電図をはかってから、もう少し病状の観察をする。しかし彼の年齢ではおそらく難しいだろう。心の準備をしていた方がいいでしょう。今から看てきましょう」
アチンはしばらく老爺子の部屋をみつめ立ち止まっていた。


posted by フェイユイ at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | [薛/子]子(ニエズ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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