2006年03月05日

「眠狂四郎 勝負」市川雷蔵

勝負.jpg狂四郎a.jpg狂四郎b.jpg
(モノクロ写真2枚はこの映画のものではないと思いますが)

「豚姫が!雪より綺麗な俺の身体に触れようなどとは無礼千万だぞ」

劇中、狂四郎が将軍の娘である高姫に捕らえられて吐くセリフです。
こんなセリフは天下の二枚目市川雷蔵でなければとても言えませんでしょう。彼が言うこのセリフにばったり倒れてしまうのは私だけではありますまい。
このセリフの前の言葉は「権力を日傘にへつらいを子守唄に聞きながらしたい放題に育った女。己を鏡に映してみろ。豚より醜いぞ」というものです。この女に対して傲慢な狂四郎の言葉が却ってすがすがしく聞こえてしまうのは狂四郎が権力といったものを全く意に介していない潔さがあるからでしょう。

そのセリフからして、この映画において眠狂四郎という剣客がいかに美しく魅力的な男なのかだけを演出していってるのだと言う事が感じられるのです。

この「勝負」またしても不思議映画でして出だしの少年の話はそのまま立ち消えだし、将軍の娘である姫(姫と言っても出戻りだが)が屋形船で逢引してたり、勘定奉行が気軽に町を歩いてたり、眠狂四郎と対決を夢見る剣士たち(しかも一人は肺を病んでいる!)が出てきて「闇討ちしようか」「それでは卑怯だ。やはり一対一で闘うべきだ」と話し合ってたり、キリスト教の布教をする異人さんが狂四郎を一目見て「苦悩に満ちた顔だ。こういう魂を救うために私は日本に来たのだ」と訴えたりする。
それにこの円月殺法自体がその威力の程が何とも謎なのです。
だが、そういったことも狂四郎のかっこよさを現すためにあるのでしょう。

例えば狂四郎が挑んでくる剣士たちから姿を隠しているのだが、手裏剣を投げられ、一瞬足が映る、がカメラが狂四郎を追うと梅の木に変わっている。
まさに梅の化身ともいえる狂四郎の美貌なのです。

だが、この映画で心に染みてくるのは狂四郎と年老いた勘定奉行・朝比奈(加藤嘉)との交流なのです。朝比奈さんはかなりの高齢というのに、民百姓の心配をして他の私利私欲で動いている侍どもを一喝し上様に直訴してでも民を救おうとする熱血な精神の持ち主。その老人に表面は冷たいが心を動かされた狂四郎は何かと老人の保護をする。最初は煙たがっていた老人も狂四郎に次第に惹かれていく。
最も情緒溢れるシーンは狂四郎と勘定奉行が町の小さな蕎麦屋で熱い蕎麦をすする所。折りしも粉雪が降り始め、店の明るい少女・おつや(高田美和)がふたりにおまけの汁を注いでくれる。旨い蕎麦の温かさが感じられるいい場面です。

ところで眠狂四郎はどうやらハーフらしいのですね。どこの国かは解らなかったのですが、彼は茶髪なんですね。ということは多分白人系でなければいけないわけで。
ますます謎に包まれる眠狂四郎なのです。

監督:三隅研次 出演:市川雷蔵、加藤嘉、藤村志保、高田美和 1964年製作


アマゾンの「眠狂四郎無頼控 柴田錬三郎選集」にはこう記されていました。

「時は文化・文政年間爛熟期の江戸。ころび伴天連と大目付の娘とのあいだに生まれた虚無の剣士・眠狂四郎。その異常・必殺の剣〈円月殺法〉を駆使し、諸悪の根源を縦横無尽に斬る。時代小説に新風を吹き込み、一大ブームを作り、いまも語り残る著者屈指の代表作。」


posted by フェイユイ at 22:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
シリーズで「無頼剣」とともに傑作の一本ですね(因みに「勝負」は第二作目)。事件物(一つの事件を追っていく物語-たとえば刑事物)にはしないという、散文的手法で作られています。
 
 狂四郎は転びバテレン、即ち棄教して神の代わりに悪魔を信仰するようになった宣教師と、黒ミサにささげられた武家娘の間に生まれた罪の子であり、後に知った出生の秘密により、虚無を生きる孤高の剣士となったのでした。
ある事件の時、地下に潜む実父と出会い、一刀のもとに斬り捨てています。
是非、原作をオススメします。
Posted by ユリシーズ at 2008年02月11日 17:30
昔の日本映画は本当に面白かったんだなあといつも思います。
現在も色々頑張っていますが、昔のもののほうがよっぽどびっくりさせられます。

そうですか。原作も是非読んでみたいものですね。
ユリシーズさん、ありがとうございます。
Posted by フェイユイ at 2008年02月11日 19:57
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