2006年05月24日

「ブロークバックマウンテン」アン・リー

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DVD中文字幕で「ブロークバックマウンテン」を観ました。
なので言葉による理解は完全ではないのですが、それでも深く心に染み込んで来る物語でした。

それほど内容について知っていたわけではないのですが、アン・リー監督の技量と言うものなのでしょうか。言葉ではなく映像によって伝わってくるものがあったと思います。

冒頭からカメラが映し出すものは荒涼と言っていいほどの淋しい風景です。広大な空間にぽつんと立てられた粗末な建物。そこへ走ってくる古ぼけたトラック。建物には男が寄りかかって何かを待っている。トラックからも男が降りてくるが二人の間には会話もない。

二人はブロークバックマウンテンで羊の放牧をまかされる。言葉数は少なく自然の中には羊達と二人の男の姿だけが存在する。二人をとりまくのは大自然の脅威だけ。この時が二人の最も美しい時間だった。

自ら愛を求め二人で暮らそうと願うジャックに比べ、イニスの心は怖気を振り切ることができない。幼い時に観た同性愛者の男達の悲惨な末路を忘れる事ができないのだ。
イニスの行動は奇妙なものだ。ジャックに素直に気持ちを伝えることなく彼が去った後に狭い路地に入って憤り、気持ちの定まらぬまま結婚し娘をもうけそれなりに賢明に父親を演じる。そして4年ぶりにジャックに再会した時にはまるで子供のようにはしゃいで駆けつける。妻にジャックとのキスを見られたのに気づかぬまま釣りに行くと言ってでかけ魚を釣ってきた事がない。やがて離婚するがそれがジャックとの逢引を増やす事にはならない。寡黙で沈鬱な魂の持ち主なのだ。だが、イニスのジャックへの想いは心を揺さぶらせずにはおかない。たとえそのために妻子が非常に辛い状態になってのだとしても。どうしようもなく不器用な情けない男なのだと思っても。

互いに結婚し子供も持ちながら二人は別れることはできない。が突然に別れが訪れる。それはジャックの死によって。
ジャックの妻に電話をかけながら、イニスは昔見た同性愛者の惨殺の場面を思い出す。ジャックの死もまたそうなのか。
イニスはジャックの両親の元を訪れ、彼の部屋の箪笥の奥に二枚重ねのシャツを道ける。それはかつて二人が心が通じ合わない為に殴り合いの喧嘩までしてしまった時にイニスの鼻血でシャツが酷く汚れてしまった、そのシャツだったのだ。イニスがそれを抱きしめて泣くシーンはそれまでの彼の寡黙さを打ち消すかのような切ないものだ。

映画の終わりでイニスが血のついたシャツを見つめながら「I swear…」とつぶやくシーン。上映の際には「永遠に一緒だ」となっていたようだが中文字幕では「ジャック、俺は誓うよ」となっていてやはりこちらの方がより気持ちが伝わってくるような気がする。

この映画を観る前にヒース・レジャーが気になる存在になっていたのでいくつか映画を観ていたのですが、そのどれとも違うイニス役に驚きました。本当に体の大きな西部男を演じきっている、と感じました。無骨な男という雰囲気がにじみ出る素晴らしいイニス役でした。
一方のジェイク・ギレンホールは初めて観たのですが、あえて比較していうとヒースのイニスよりジャックという役をこんなに魅力的に演じきったギレンホールに私は参りました。写真で見ていた印象よりもっと若々しくて深いものがあると感じさせてくれます。こういう役は本当に難しくまた偏見もより激しいのではないかと思うのですが、じっと見つめる眼差しが心に残ります。

監督:アン・リー 出演:ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール


posted by フェイユイ at 00:16| Comment(2) | TrackBack(1) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイユイさん、思わずこちらにもTBしてしまいました。すみません、よろしくお願いします。
BBMにはまり、拙ブログで記事を書き連ねております。ラストの字幕の解釈をTBした記事で語っております。
度々失礼いたしました。ではでは。
Posted by 真紅 at 2006年06月20日 22:23
いえいえ、ありがとうございます。
こともあろうに私はこの映画を中国語字幕のDVDで観ているので記事にも書いているように「俺は誓う・・・」と頭の中で訳して読んでました(笑)
映画館で観た人は随分印象違ってきますね。
Posted by フェイユイ at 2006年06月20日 23:04
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Weblog: 真紅のthinkingdays
Tracked: 2006-06-20 22:19
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