2006年07月04日

「ダーク・ウォーター」ウォルター・サレス

ダーク・ウォーター.jpgダーク・ウォーター2.jpg

今夜は酷い雨が降っている。ダーク・ウォーターの夜だ。

ダリア(ジェニファー・コネリー)は両親特に母親から愛されなかったという辛い過去を持っている。
彼女はやがて娘を持つが夫と上手くいかず離婚した。
ダリアは娘セシーと二人だけの住居を探した。

そこは華やかなニューヨークの中心とは違い影の場所なのだ。ルーズベルト島には暗く重い空気が澱んでいるかのようだ。降り続く雨も陰鬱な心を表している。
二人が借りた安いアパートは全てが古臭くセシーは気に入らない。
だが屋上でキティちゃんのバッグをからセシーは拾ってからそこに住みたいと言い出す。
その可愛いバッグに秘密が隠されている。

ダリアは移り住んだアパートで不可思議な現象と出会う。天井から水道から血のような汚れた水が溢れ出すのだ。
その汚れた水はダリアの心の中に溜まっていたものだ。
幼い頃から愛して欲しい母親から愛されなかった日々の悲しみ、絶望。そして愛するはずの夫への不信感、憎悪。
彼女の心からは汚れた水が溢れ出してくるのだ。
だがそれは彼女だけの念ではない。上の階に住んでいた少女ナターシャの想いでもあったのだ。

ナターシャも両親から見捨てられ一人ぼっちで死んでしまった。
愛して欲しいと呼ぶナターシャの声にダリア親子は反応してしまった。
娘は同じ年頃の少女として、ダリアは両親の愛を得られなかった同じ子供として。
ダリアとナターシャは同じ魂を持つために共鳴しまった。二人の苦しみを汚れた水として噴出してしまったのだ。

そのためにダリアはナターシャの部屋でナターシャの母親と自分の母親の姿を重ねた状態で見てしまうのだ。

親から虐待を受けたものは同じように子供に虐待を繰り返してしまうと言う。だがダリアはその過ちを繰り返すまいと誓っているかのようだ。
彼女は娘を溺愛していると言っていいほど可愛がっている。そしてダリアとナターシャは親に愛されなかったという点で繋がっている。
ナターシャはダリアに母の愛を求める。
ダリアは娘を愛しながらも自分の魂を持つ少女ナターシャをつい可哀想と思ってしまったに違いないのだ。

小さい頃、動物の死体を見たら「可哀想と思ってはいけない。思うととりつかれてしまう。夢見んな,と言って唾を3度吐かねばならない」というものがあった。(昔はやたらと道路で何かの虫や動物が死んでいたのだ)
誰から聞いたのか、恐怖のためにその言い付けを守ったものだ。今でも唾は吐かないものの同情しないように気をつけている。(とは言ってもやはり可哀想と言ってしまうものだ、仕方ない)

ダリアは愛する娘セシーと生きていく為にナターシャに唾を吐きかけるべきだったのだろうか。
でもそれができないほど彼女の心は過去の絶望で傷ついていたに違いない。
「あんたが憎い」と自分に言う母の思い出に向かって「私こそあなたを憎む」と言って泣くダリア。
ダリアは親に捨てられて死んでしまったナターシャを可哀想に、と思ったのだ。
これはダリアと娘の愛の物語であると同時にダリアとナターシャの物語でもある。
屋上のタンクで死んでいたナターシャをダリアは見つけ手を差し伸べた。
ナターシャは他のホラー映画のように怖ろしい顔をして見せることはなかった。寂しい顔をして「お母さんになって」と言っただけなのだ。かわいそうなナターシャ。どんなに寂しく生きていたことだろう。いけない。私もダリアと同じになってしまう。

ナターシャに心寄せられたダリアは娘セシーの命を引き換えにナターシャと永遠に暮らすことを約束する。怒涛のように溢れる水はナターシャの叫び声のようだ「私を愛して」と。ただ自分の娘を助ける為だけでなくダリアはナターシャのもとに行ったのではないのだろうか。

ナターシャを選んでしまったダリアは最後に娘に「お前を愛しているのよ」と告げるために姿を現す。娘はわかってくれた。よかった。
(このフレーズは「ビハインド・ザ・サン」の時と同じだ。愛する人のために自分を犠牲にした。そしてその人はそれをわかってくれるのだ)

激しく痛む心のように降り続けた雨がやんで空は晴れている。
最初はなぜウォルター・サレス監督がハリウッドホラー映画(しかも日本映画のリメイク)の監督を引き受けたのか、と訝しく思った。
だけどその気持ちは「ビハインド・ザ・サン」やチェ・ゲバラの心と変わりはしなかったのだ。

監督:ウォルター・サレス
脚本:ラファエル・イグレシアス
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
撮影:アフォンソ・べアト
編集:ダニエル・レゼンデ
プロダクション・デザイン:テレーズ・デプレス
原作:鈴木光司 「仄暗い水の底から」

出演:ジェニファー・コネリー
ジョン・C・ライリー
ティム・ロス
ピート・ポスルスウェイト
2005年アメリカ

日本版オリジナル及び原作は未見なのでここでの感想はこの作品のみでのものです。日本版にすでに演出があったとしてもまだ知らないことなのでご了承ください。
それにしても壊れてばかりのエレベーターの場面が一番怖い。シ○ドラー製かなと思って。


posted by フェイユイ at 23:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして、TB返してくれてありがとう

私は日本版も見ています。邦画は嫌いで一年に
1本見ればよい方で黒木瞳が主演とうことで見ました
オリジナルもリメイクも共に怖さを売りにした
作品ではなかったのが私は好感が持てました。
怖いだけのホラーも良いけどこの作品のようにドラマ
生の強いホラーも好きです。
Posted by せつら at 2006年07月24日 21:08
こちらこそTBコメントありがとうございます。
ウォルター・サレス監督がハリウッド・ホラー?と言うことで見たのですが、やはりサレス監督は他の何者でもない、と言う感じでした。
日本版もよさそうですね。観たいものです。
Posted by フェイユイ at 2006年07月25日 12:37
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。