2006年07月16日

「シリアナ」スティーブン・ギャガン

syriana.jpgシリアナ.jpg

石油が無くなってしまったらどうなるのだろうか?それを真剣に考え出したらほぼ皆が気が滅入ってしまうに違いない。この映画ではそこらがテーマとなってるわけで観て気持ちがいいわけがない。
且つこの映画の作りにおいて登場人物は社会の歯車のひとつ(ごく小さな歯車の)に過ぎないのであって誰かが英雄的に世界を変え得るわけでもない。

ポスターなのかな目隠しをされたCIAのボブ(ジョージ・クルーニー)のアップである(上の奴)彼の運命を象徴してもいる。自分の仕事に対して目隠しをされていたのだから。彼の目を隠したのはアメリカ国家自体だ。
だが映画の中での彼の行動は限られたもので驚いた。アカデミー賞助演男優賞を取った彼は映画の中では何の力もなく彷徨っているかのようだ。人を助けたり戦ったりするような華々しい活躍もない。仕事上で口を滑らし見捨てられてしまっている。

DVDのパッケージの方(サイドにある奴)は登場人物の存在が3分割されているのを示している。が、これも正確ではないだろう。無論映画の中で最も重要なのは中東の人々だろうから。

アメリカ人の彼らとその家族達の物語と中東のナシール王子とその国、そこで働く父と息子、若者たちの物語を交互に映し出すことで人は皆同じように家族を愛し、悩み苦しんでいるのだと伝える。
アメリカ映画の中で細心に注意を払いできるだけの公平さで描いているように思える。

CIAのボブ、コネックス社とキリーン社の合併で苦心するベネット・ホリディ(ジェフリー・ライト)の話よりは少し感情移入しやすいのがエネルギーアナリストのブライアン・ウッドマン(マット・デイモン)だろう。
彼がナシール王子のパーティで出会った子供を失うと言う事故は辛いことだ。が、彼はその事がきっかけで彼の経済アドバイザーとなる。
これはアメリカ人ブライアンが中東の王子の片腕になる事に対する反感への防御なのか。息子の死で自暴自棄になってしまったのだと。
とはいえこれで夫婦の仲が険悪となりブライアンは一人王子の側に残る事になる。
辛いきっかけではあるが一アナリストが石油産出国の経済アドバイザーになる、と言うのは夢のようなことかもしれない。だがこれも石油という麻薬に翻弄されたのかもしれない。息子の死で得たきっかけで掴んだ仕事にのめり込む夫を悲しく見る妻の気持ちがまともなのだ。だが世界を動かすような仕事に出会ってしまった男は同じ行動を取るのかもしれない。

ばらばらだったボブとブライアンの物語がここで少し接触する。やがて起きる悲劇への前奏(どこが前奏か判んないけど)

マット・デイモン演じるブライアンはアメリカ(やその他の国が)がどう考えているかをぶちまける「あなた方は吸い尽くされ資源の残骸だけが残るのです」
ナシール王子は高邁な理想をブライアンに打ち明ける。それを聞いたこちらは応援したくなる。
が、運命は(というかアメリカは)彼ではなく操縦が楽な弟王子を後継者に仕立て上げ、ナシール王子をアメリカに対するテロリストとして抹殺するのだった。その妻子も共に。そして彼を救おうとしたボブもまたその犠牲となる。彼らを打ち殺したミサイルが破壊した車から黒い煙が立ち上る。
よくここまで描けたものだと思う。

信仰深い二人の若者がテロリストになっていく過程も同情的に描かれていた。

来世こそ真の世界だという言葉が悲しく残る。

監督:スティーブン・ギャガン 出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ジェフリー・ライト、アレクサンダー・シディグ
2005年アメリカ

ジョージ・クルーニーが知ってなければわからないほど太っていて驚く。裸のお腹など見惚れてしまう。その容貌が組織に振り回されるCIAを演じるのに相応しく悲哀を感じるものであった。やはり素晴らしい役者だと思わされる。
ナシール王子も悲劇を感じさせる知性的な風貌なのがよい。その他の中東の登場人物も。どういう人物を使うか、と言う事でも作者の思惑が感じられるからだ。お飾り的な女性が使われていなかったことも他の映画にはないことだろう。必ず入る恋愛劇とかね。

マット・デイモンは(なにせマット・デイモンというカテゴリ内なので)充分に彼の特性を生かして演じていた。やや背が低いとはいえ、いかにもアメリカ的な容貌がここでの重要な要素であったはずなので。
家族的でありアメリカの良心的率直さも満足のいく出来栄えだったのじゃないかな。ちょっと固い言い方だけど何しろ一つの駒としての役なのでそういう意味でも(目立ちすぎてもいず)素晴らしかったと思う。しっかしラブシーンないね。コンビ好きのマットだがここでのコンビはナシール王子とだね。また後で彼のだけの記事を書くかも(笑)乞うご期待!



posted by フェイユイ at 21:29| Comment(0) | TrackBack(1) | マット・デイモン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Weblog: 戸利 菜津雄のエンタメレビュー
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