2005年03月06日

「サマリア」での男と女

ヨジンとチェヨン.jpg

「サマリア」は援助交際によってお金を稼いで旅行に行きたいと思ってる女子高校生の話。といってしまえば、またまた拒否反応を示されるに違いない。大体、それでキム・ギドク監督は評価がいつも分かれてしまうような設定ばかり描いてるのだ。
が、ここでギドク監督が描いたものはなんだろう。タイトルは「サマリア」このサマリアは勿論、主人公・ヨジンを現している。サマリア人は異教徒によって穢された者なのだが、実は信仰深き人ということを現しているのなら、ギドク監督は友人のために売春(まがいの行為)をするヨジンをサマリアである、と言っているのだ。
それなのにヨジンのパパはヨジンを穢された者としてみなしている。ヨジン自身は全くそのことを感じてはいない。ヨジンの心にあるのは友人チェヨンのことだけだからだ。ヨジンには男たちもお金も何の意味ももってはいない。
これはギドク監督が援助交際がこういうものであるということを描いてるわけでは無い。援交はただ若い女の子に起こり得る可能性として提出されたのであるだけだ。
ギドク監督は多くの場合、女性に拒否反応を示されるということらしいが、これはどうしたことなのだろう。ギドク映画は多くの場合女性的であると私は感じているからだ。視点は女性の側にある、と思うからなのだが。この映画の場合、第3章でのみ女の子から視点が男であるパパに移るのだが、サマリアであるヨジンの正当性と違ってパパの行為は的外れだ。自分の大切な所有物である娘を穢した男たちに自分勝手な復讐を果たしているだけだからだ。ここでは友人を思いやる女性とエゴイスティックな男性が対照的に描かれていると思う。
ちょっとおかしく思ったのはこれまでと違って高校生である彼女たちははっきりした売春行為のシーンはないし、体もつつましく隠されているということだ。はっきり彼女たちの裸体が見えるのは二人きりでお風呂に入ってキスをする場面なんだから、レズビアンだといわれても無理はないでしょう(とそこへもっていく)(韓国では当たり前の友情表現なのかもしれないが、ヨジンとチェヨンの触れ合いに引き込まれたのは事実。韓国では普通って言ったってそんなに他の韓国映画で女性同士キスしてるシーンなんて見てないよ)(話が別方向へいく・・・)

でもそういった恥らった演出が嫌だといってるわけでは無論なく、女性としてはギドク監督の優しさをそこに感じちゃうわけなんですよ(私としてはね)。
この「サマリア」で進んで援助交際をする高校生チェヨンを演じたハン・ヨルムはギドク監督の新作「弓」でまた老人と恋をするという役を演じるらしいし、可愛らしいハン・ヨルムがどんな演技を見せてくれるか楽しみである。
posted by フェイユイ at 13:55| Comment(10) | TrackBack(8) | キム・ギドク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たびたび、すみません。
もう読まれたかもしれませんが、「サマリア」のクァク・チミンのインタビューが載っていましたので、ブログで取り上げました。TBしましたので、よかったらご覧になって下さい。

クァク・チミンかわいい♪
Posted by hi-chan at 2005年03月16日 14:57
見てきましたー。hi-chanさんのエントリも大変興味深く読みましたが、クァク・チミンのインタビューよかったですね(韓国の北野武は置いとくとして)全然知りませんでした(ほんと情報少ないんです私)TBありがとうございます。
そうそう、「キッズ・リターン」の安藤くんが好きだったのです私もw私はあれは安藤くんじゃなかったら好きじゃないかも。そのくらいあの安藤君は魅力的でしたよ。
Posted by フェイユイ at 2005年03月16日 22:36
おじゃまします

男性的欲望がけっこうバックグラウンドになっているとも感じますが、女の子への眼差しには母性愛的なものも感じます。

第三章は、パパが主役であるにしても、物語を牽引しているのは娘であり、パパに殺されるイメージも、ラストもヨジンの心象であると考えまする。

つっても、この映画の各章は主体が移り変わる様を描いていて、第一章はチェヨンに始まりヨジンで終わる。第二章はヨジンからパパへ、第三章はパパからヨジンへ
それぞれ、一方が他方に置き去りにされる物語となっていて、結局のところ人間は孤独である・・・という映画ではないかと

ラストは希望と絶望の狭間で揺れ動いていて、誰よりも監督が心を痛めていたと感じます
ギドクが優しい人だというのは、私も100パーセント同感。
そして、彼は現代を代表する映画監督であることは様々なシーンから香り立つ美しさが語っています
Posted by しん(stud!o yunfat) at 2005年05月20日 00:28
いらっしゃいませ。しんさん。
キム・ギドクの映画のおもしろさの一つは、同じ作品を観て色んな解釈ができることでもありますね。
そしてよい方にも悪い方にも激しいショックをあたえてしまうのですね。
私はキム・ギドク監督は他にないほど女性を描いている映画監督だ、と思っていてそこが大好きです。
Posted by フェイユイ at 2005年05月20日 23:01
トラックバックありがとうございました

確かにヨジン父の行動はエゴイスティックでありましょう。
ただ、本来なら見せてしかるべき「父親としての」「警察官としての」道徳観を振りかざすことなく、ただ娘への盲目的な愛によって突っ走ったところに私は美しさを感じます。
Posted by 朱雀門 at 2005年05月22日 01:57
こんにちは、朱雀門さん。ほんとにパパのヨジンへの愛は盲目的なものでしたね。私はこの映画を見た時、ヨジンとチェヨンの愛情に惹かれすぎたのかもしれません。
今、思い返すとひたすらチェヨンのことを考えている娘の思いを気づかないパパの愛は何と悲しいものなのでしょうか。実際に思っていればいるほど、すれ違っていくということがありますね。その意味でこの映画はまたパパを描いた映画でもあるのでしょうね。
Posted by フェイユイ at 2005年05月22日 14:55
はじめまして。
「ある在日コリアンの位牌 」さんから飛んで来ました。「サマリア」「悪い男」とギドク監督の作品を見て、正直よくわからなかったのですが、フェイユイさんのレビューを読ませて頂くと、明確になった部分が多いので驚きました。フェイユイさんの読んで見ればよかったとちょっと後悔しております(苦笑)。この2作品の私のTBはあまり好意的でないかもしれませんので、ご迷惑なら削除して下さいね。勉強になりますので、また遊びに来ますね。これからも宜しくお願いします。
Posted by wasewase at 2005年06月02日 12:49
はじめまして。そういっていただけて本当にうれしいです!wasewaseさんのレビューも読ませていただきましたが、迷惑だなんてとんでもない。確かにキム・ギドク監督はわざと人が目を背けたくなるような題材ばかりで映画を撮っているので、観るものがぎょっとしますよね。私はキム・ギドクの最初の映画で好きになってしまったので、どうしても好意的に観てしまうんですよ。
他の人のレビューを見て「しまった!」ということは私も多々ありますね(笑)言われて見直してみると、すごくいい映画に思えてきたりして(笑)
どうぞこれからもよろしくお願いします。
コメント・TBありがとうございます。私も是非TBさせてください。
Posted by フェイユイ at 2005年06月02日 21:20
キム・ギドク監督の作品はこれが初めてだったのですが、かなりの衝撃でした。
石を取り除くシーンやラストの河原のシーンが未だに焼き付いて離れません。
ところでフェイユイさんは中文字幕が読めるんですね、うらやましい!
私も中国電影を日本語字幕無しで見れるようになりたくて、中文の勉強を始めて約1年になりますが、まだ理解するには程遠いです。
これからも映画評、楽しみにしてます。
Posted by dr0n3 at 2005年07月02日 15:09
はじめまして、dr0n3さん!
キム・ギドクの映画はどれをとっても「衝撃!」を受けてしまいます。私はすっかりのめりこんでしまっています。
中文字幕が読める、と言われてしまうと真っ赤になってしまいます。とてもそんなに言えるほどのモンではないので(^^ゞ
ただ、何もないより漢字なので中文がついてるほうがやっぱ助かるなー、というくらいのモンです。でも中国語の勉強はとても楽しいものですね。最近は以前より怠けてるのでこれもいばれませんが、同じ漢字の言語なのに違う、でもやっぱり受け継いでいってるのだな、という不思議な感覚にひたれます。
大いに偏った映画評をしておりますが、どうぞこれからもよろしくお願いします。
コメント、TBありがとうございます。私もTBさせていただきます。
Posted by フェイユイ at 2005年07月02日 18:41
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