2005年05月24日

「悪い男」再びそして後半

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今日も全部最後まで書いてしまいますのでよろしくお願いします。

ソナは変わっていく。売春宿の前でねぎの皮をむく女たち、手伝おうと言うハンギの子分。ソナもそれを手伝おうとする。束の間のほっとする時間だ。

だが、すぐに運命は大きく変わっていく。以前この街で荒稼ぎしていたダルスというヤクザが出所してきたのだ。ダルスはソナに目をつけ部屋へ向かう。ハンギと子分たちはすぐに駆けつけソナからダルスを引き離す。ダルスの子分がハンギの頭を石で殴る。ハンギは落ちていた紙を折りたたんで先を鋭く尖らせその子分の喉をさすのだ。(キム・ギドクの映画はいつもどこかしらおかしいのだが、石と紙で喧嘩しているという図がなにかしらおかしい。グーとパーだから?)

ソナは積極的に客に声をかけて呼び込むようになる。ハンギはそんなソナのほうへ歩いてくる。と、そこへダルスの子分が抱えるほど大きなガラスの破片をもってハンギの腹を刺す。叫ぶソナ。おびただしい血がハンギの体から流れる。ハンギはじっとソナを見つめる。

ソナの心は次第に変わっていくのだ。怪我をしたハンギの帰りを待つ。また子分がやったダルス殺害の罪で刑務所へ入ったハンギをソナはののしる。すぐに出てきてと。ハンギがいない間、ソナは荒れ狂ってしまう。店の姉さんがソナにいう。ハンギは今日出所したと。それでソナは突然落ち着いてしまう。そして鏡を見る。鏡の裏にはハンギがいて中からライターをつける。鏡越しに互いの姿が見える。そうだ。この時二人を隔てていた鏡ソナからは見えない鏡が取り払われ互いの姿が見えるのだ。このときのハンギの顔はこれまでに人に見せたことはないであろう悲しげな表情だ。ハンギの顔が映るのをみたソナは激しく鏡を打ち割る。ソナ自身が二人を隔てていた鏡に穴を開けたのだ。

ハンギとソナは同じ部屋の中にいる。ソナはハンギの顔を叩き泣き出す。ハンギはソナを抱きしめる。ソナもハンギの体を抱く。指は鏡を打ち割り血が流れて痛々しい(実際この時ソナ役のソ・ウォンは怪我をしてしまったらしい)

ハンギはソナを売春宿から解放する。二人は初め出会ったベンチに座る。女子大生であるソナの隣にヤクザのハンギが座ったことで、ソナがハンギを蔑んだ目で見たあのベンチだ。ソナはそっとハンギの手を握る。だがハンギはその手を離し去っていく。

ソナを手放したことを恨む子分はハンギをののしる。ハンギは初めて言葉を口にする。「ヤクザが何が愛だ」とかすれる声を出して去る。子分はハンギの後を追う。川べりで小用をたすハンギの腹を子分は刺す。だが、ハンギははじめから解っていたかのようにその刃物を深く受け入れる。子分が逃げ去った後でそのナイフを砂の中に隠すハンギ。ハンギはかつてこのような気持ちを持ったことがあったのだろうか。

深く刺されたはずのハンギが起き上がる。このシーンはとても不思議だ。またもやキム・ギドクの魔法なのだろうか。子分の刺し方は確かに致命傷と思えた。ハンギは死んだ、と。だがハンギはゆっくりと起き上がり汚れた服を取り替えさえする。

ソナは家に帰ることもなくさまよっている。誰から命じられたわけでもないのに、通りがかりのトラックの運転手とセックスをする。多分、海まで連れて行ってくれることと引き換えに。

ソナが向かったのはハンギと来た浜辺だ。あの時赤いワンピースの女が座った場所にまた座ってみる。ソナは何気なく砂を掘ってみる。すると奥から写真の切れ端が出てきたのだ。それは以前拾った、欠けていた男女の顔の部分だ。それはソナとハンギの顔だった。

最初、見た時この女性はなんなのだろう。ハンギの昔の恋人なのか、と思った。しかしこの赤いワンピースの女性はソナ自身なのだろう。あの時見た女は時間を越えて二人の前に現れたのだ。なぜならハンギが誰かを愛したことがある、とは思えないからだ。ハンギはソナに会うまで誰も愛さず誰からも愛されたりしてはいないのだ。

ソナは赤いワンピースを買いに浜を離れる。そしてハンギが浜へたどり着く。不思議なことに服には血のあともないし、痛みもないようだ。ハンギはそこに座る。ソナが赤いワンピースを着て登場する。ソナはハンギの側に座りそっと寄り添う。ハンギはソナの方を優しく抱く。

二人は一台の赤い幌のトラックのなかに布団を敷き男を呼ぶ。そしてソナが男と売春をしている間、ハンギは海を見ながら待っているのだ。そして事が終わるとハンギはトラックの中のベッドを整える。二人は赤い幌のトラックに乗り込み、旅に出る。

美しいラストシーン。ソナとハンギはもう離れることはない。でも、これは本当なんだろうか。
ハンギが子分から刺されたあの瞬間、やはり、ハンギは死んでいたのではないか。その後の映像はひどく幻想的だ。刺されたハンギが何事もなかったかのように歩いてくる。赤い幌のトラックで売春のたびに出る、というあり得ない物語も夢だからではないか。では、二人が見た海に入っていく赤いワンピースの女はソナの姿なのか。ハンギを失ってしまったソナは海に入っていってしまったのか。違う魂を持った二人が出会って一つに共鳴してしまった、そのことは許されないことなのだろうか。キム・ギドクはひどく意地の悪い笑顔をして、よく考えて、と言っているようだ。
posted by フェイユイ at 23:39| Comment(5) | TrackBack(2) | キム・ギドク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うーむ。深いです。深すぎる。新しい解釈ですね。
ハンギはあそこで死んでいたという・・・
でも私もなんで生きてるの???と観た時思ったんですよね。不死身過ぎるぅと。
ラストのトラックのシーンも「ええええーーー」と思ったんですが、ハンギが死んでいると考えると、納得できるような気がしてきます。

キム・ギドク監督は、映画の内容について、インタビューとかで、説明をされたりしない方なのでしょうか?
観た人が自分で考えろ〜という感じなのでしょうかね。
Posted by hi-chan at 2005年05月25日 14:24
こんにちは、hi-chanさん。読んでくださってありがとうございます。
キム・ギドクの映画は見る人それぞれ色々な解釈ができるところがおもしろいですね。これは私なりの感想ですが、他にも色々な解釈を皆さんされるのだろうな、と思います。
DVDの中の監督は特にその辺にはふれられてなかったような・・・もし話されていたらごめんなさい(笑)(昨日のことをすぐ忘れてしまう。)確か、「一般に卑下されている存在である二人が最後にはとても美しく見えてくる。そういう映画を作りたかった」と言われてましたね。勿論、まさにそういう映画だったと思います。
Posted by フェイユイ at 2005年05月25日 19:48
こんにちは。最後の場面は、理解に苦しんだのですが、フェイユイ さんの解釈だと非常にクリアになりますね。こちらもTBさせて頂きます。宜しくお願いします。
Posted by wasewase at 2005年06月02日 12:54
先月、「受取人不明」に書き込みさせて
いただいたkomariです。こんにちは!

このたび、自分のblogにお気に入りの
「韓国ドラマ・韓国映画関連サイト」の
リンク集を設けました。

「藍空」さんは、幅広くアジア映画の
レビューを書いていらっしゃいますが、
特にキム・ギドク監督関連の記事に惚れこんで、
勝手ながらリンク集に掲載させてもらいました。

さしつかえあれば削除しますので、
お手数ですがうちのblogにコメントをお願いします。
Posted by komari at 2005年06月19日 17:50
こんにちは、komariさん。さしつかえなどとんでもないです。ありがとうございます。
そんな風に言っていただけて本当にうれしいです。これからもよろしくお願いします。
Posted by フェイユイ at 2005年06月19日 20:53
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「悪い男」
Excerpt:   「サマリア」等で今、大注目の鬼才キム・ギドク監督が見せる、「究極の愛のかたち」。・・・という感じで、宣伝用ならコメントできるかもしれませんが、いやーどうですかねー、「愛」なのかな?正直なコメ..
Weblog: 映画・映画・映画
Tracked: 2005-06-02 12:55

hangryu -韓流雑記13- 悪い男 -
Excerpt: 11/18解禁ボジョレヌーボー飲みながらいい気分で書いてます。 イ・ジョンウォン
Weblog: イ・ジョンウォンさんの記憶
Tracked: 2005-06-19 17:45
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