2005年08月18日

「アレキサンダー」インドの戦いそして栄光への道

インド象.bmp
かわいい。

インド。アレキサンダーがついに突き進むことをあきらめた国。まったく観ていても気が滅入る。降り続く雨。乾いた国であろうマケドニア・ギリシャ地方から来たものには耐え切れぬ気功なのではないだろうか。レイ・ブッラドベリの小説にいつまでも雨が降り続きおかしくなってしまう男たちの話があった。猿・蛇などの動物たちに襲われる恐怖。
各地の人々と友好を結んできた彼らだが、インドでは人々が得体の知れない人種として描かれている。それでもアレキサンダーは「理解しろ」と妻を諭すのだが。

唯一の慰めとしてバゴアスの踊りの披露がある。素晴らしい舞踊にアレキサンダーはバゴアスに口づけを贈る。兵士たちのはやし声をうけて。
この辺りのアレキサンダーの長い金髪が好きだ。もう完全にいってる顔をしてる。特に側近のクレイトスの反逆に怒り、その腹を刺した後、落ち込んで部屋にこもっている王がたまらなく魅力的である。「私は暴君だ」と嘆くアレキサンダーに「皆、きみを誇りに思い許してくれる」と慰めるヘファイスティオン。「全てが間違っていたのだ」とアレキサンダーは泣き崩れる。

ここで場面は8年前に戻る。僅か8年前だ。父王・フィリッポスがまだ存命で司令官となった祝賀式典が行われようとしていた。ここでアレキサンダーは父王からクレイトスが信頼の置ける部下だと紹介を受けるのだ。父・フィリッポスを慕っている様子が伝わってくる。新しい妻と生まれたばかりの赤ん坊、そして母・オリンピアスの見守る中、父王は競技場へと入る。そしてそこでかつてフィリッポスの小姓であったパウサニアスによりナイフを突き立てられ絶命する。ヘファイスティオンはすぐさまアレキサンダーの腕を取り「マケドニアの新しい王アレキサンダー」と叫ぶのだった。
父王を殺したのは誰だったのか。アレキサンダーは父・フィリッポスからむしろ疎んじられていたのだが、彼自身は父を慕い続けていた。その父を殺害した首謀者の疑いが母にあることでアレキサンダーは一生苦しむことになる。

舞台がインドへ戻り、アレキサンダーはもう完全に心の離れてしまった兵士たちを説得する。だが彼らの願いは故郷の妻や子に会うことだけだ。だがアレキサンダーは彼らが帰ることを許さない。兵士たちはアレキサンダーをののしりだした。荒ぶる王は反逆者を処刑した。軍は崩壊していた。が、アレキサンダーは進軍を続ける。

密林での戦い。奇妙な夢の中の出来事のようだ。ギリシャ兵とインド兵との戦いの光景などSFの世界のようである。優秀かつ百戦錬磨のマケドニア兵も勝手が違う。密林の中を鎧姿で馬を駆る様子はなんとなく哀れな感じすら覚える。巨大な象の軍隊に恐れをなし「退却」と叫ぶマケドニア兵にアレキサンダーは「永遠に生きたくはないのか」と一人突き進むのだ。そして黒馬ブーケファラスの前に巨大な象がそそり立つ。インド兵が投げた槍がブーケファラスの首を貫きアレキサンダーの胸まで刺した。倒れるブーケファラスの背から堕ちるアレキサンダー。血が目に入ったのか周りは真っ赤に染まって見える。愛するヘファイスティオンまでが傷ついて倒れてしまった。凄惨な戦いだった。敵は逃げたらしい。アレキサンダーは盾に乗せられ掲げられて運ばれた。ヘファイスティオンが横たわる姿が見える。景色は真っ赤に染まっている。
傷も癒えたアレキサンダーは皆の前で宣言する「故郷へ帰ろう」と。いっせいに沸き起こる歓声。喜びアレキサンダーを讃える兵士たちのなかに父王・フィリッポスが立ってうなづく姿が見える。
後にプトレマイオスは語る。「アレキサンダーはインドで死ぬべきだった。そうすれば神話になれた」

ヘファイスティオンが突然具合が悪くなる。アレキサンダーは駆けつけ、アラビアへ遠征に行くのだ、と打ち明ける。そして二人が互いに子供を持ち、アジアとヨーロッパが一つになる未来を窓から眺めようと。だがヘファイスティオンは死に、そして後を追うようにアレキサンダーも毒入りのワインのためなのか突然具合が悪くなる。死に際にヘファイスティオンからもらった指輪を鷲の図柄の垂れ布に向かって差し出した。鷲がアレキサンダーの元へ舞い降りた、ように彼は感じた。アレキサンダーは死んだ。

プトレマイオスは望んでいたエジプト・アレキサンドリアでアレキサンダーの偉業を書物にしたためた。「結局アレキサンダーの夢だったヨーロッパとアジアの融合はかなわなかった。誰もその夢を信じてはいなかった。彼自身しか。全ては失敗に終わったのだ。しかしなんという壮大な失敗だろう。アレキサンダーの失敗は他の誰の成功よりも栄光に満ちている」

なんという哀しい物語なんだろう。アレキサンダーの求めた故郷・ホームと言うものはこの世に存在するものだったのだろうか。慕っていた父からも疎まれ、愛する母も彼には恐ろしい陰謀の女性としてしか感じられなかった。子供を欲したがついに生きている間に望みはかなわなかった。
人々がうんざりしこれ以上王が生きていたら王の夢に殺されてしまう。と思わせたアレキサンダーの理想。世界を一つに、なんてなんという高大な理想だったことか。あまりにも不可能すぎて何もいいようがない(まったく理想ですよ本当の)
そんな人々が笑うような理想に向かって世界の果てまで突き進んでいくアレキサンダーの姿のなんと言う悲しさ。

それにしても親友ヘファイスティオンは最後までアレキサンダーを愛し続けていたのだから、それだけがうれしいことだった。バゴアスの存在で苦しんでいるはずなのに、アレキサンダーを見捨てることはなかったのだから。

アレキサンダーの夢は叶わなかったが、彼の名前はいつまでも残るのだろう。彼の人生を知らなくともアレキサンダーが英雄であることは皆が知っているのだ。

 
posted by フェイユイ at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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