2005年08月31日

「弓(The Bow)」Vキム・ギドク

はてさて私は一体何を言おうとしているのでしょうか。自分でもよく解りません。あえてまた断っておくならここで書いていることは独断としか言いようのないものです。まだ手がかりとなる情報もないし、あるのは一枚の韓国語と英文によるDVDだけ。韓国語は解らず、乏しい英語読解力だけで会話を読み取っているのでいつもながら、勘違いしている事が多々あると思いますが、どうぞご了承ください。しかしいつもながらキム・ギドク監督の映画はセリフよりも映像で見せる表現をとっておられるので言葉がわからないものには大変親切な映画なのです。

この映画は孤独な老人とともに暮らす少女の愛の物語です。だけどハン・ヨルム演じる少女はまったく言葉を話さないので自然その心理は全て表情から読み取る事になります。それは老人も同じでこの二人には言葉と言うものがナイのです。何故なのでしょうか。

最初少女は他の男に興味は示していても老人を特に嫌っているようには見えません。「愛している」とは見えませんが、「従順」という言葉が当てはまるように思えます。
もしかしたらこの映画が宣伝される時は「老人と少女の許されない愛の物語」と言うような言葉が付されるのかもしれません。が、私にはやはりどうしても父と娘にしか見えてこないのです。しかも私には少女の方がキム・ギドクなのです。「キム・ギドクの世界」という著書には彼がどんなに父親を恐れ憎んでいたかが書かれています。何万回も朝鮮戦争の話を聞かされ、またひどい暴力を受けたかを。しかも幼いキム・ギドクは父親を憎む事すら恐ろしくてできなかった、という哀しさを切々と訴えています。なぜ彼はこれをそのまま映画にせず、少女を介して語ろうとしているのでしょうか。

この映画はいくつかの面を持っています。一つはお伽話。「孤独な魔王(老人)が美しい姫(少女)をさらってきて自分の妻にしようとしている。姫は幼い時から魔王に育てられたのでそれが運命と信じて疑わない。だが一人の若い王子(青年)の出現によって姫は目覚め、王子とともに魔王を殺して幸せになる」
もしくは頭のおかしな老人がロリコンで、少女をさらってきて自分の欲望のままに犯そうとした。少女は何も解らなかったのでそれでもいいと思っていた。
もしくはこれは年齢を超えた純粋な愛のドラマなのである。青年は凡庸な世間を表している。
もしくはこれはキム・ギドクの心を表している。俺は本当は父親が憎い。俺を縛って自分の欲求不満の捌け口にした。だがそれをそのまま映画にするのはまだ怖くてできない。自分を少女に変えて老人がさらってきて欲望の捌け口にする、と言う話にすりかえようか。
こういった思いがプリズムのように様々な色合いをみせるので、はっきり一つの話が浮かんでこないような気がするのです。

こういう風に言うとこの映画で私がキム・ギドクに何かしら不満を持ってしまったかのように読めるかもしれません。しかし、幼い頃、父親によって受けた傷をそのまま映像にするというのが怖いというのは人間として当然のことと思いますし、それでもこの映画が父親に対する憎悪というものを一番表しているのではないかと感じます。

少女が青年を好きになり、老人から嫉妬を受けて初めて反抗心を持つ。この時。キム・ギドクは多分彼自身はできなかった父親への反抗を少女にさせている。この時の少女はまったく老人を憎んでおり、弓矢で老人を(当たりはしないが)射ることすらしてしまうのだ。老人は驚き、愛する少女が自分の手から離れてしまう事を恐れる。
青年は少女が誘拐され老人の自分勝手から誰とも会えない船の生活を強いられている事を弾劾する。
青年は少女を連れ帰ろうとし、老人は失意で自らの首にロープを結わえ、その先が少女と青年が乗る船に括られている。従って老人は首を絞められもう少しで死のうとする。だが老人は届く所にナイフを置いており、ロープを切断しようとする。だがそれより早く少女はそれに気づき、すぐさま老人の下に帰る。老人は命を懸けようとした綱を切りかけたナイフをすかさず隠す(なぜ?)
こうして青年は少女を救う事はできなかったのだ。老人と少女は結婚式を始める。青年はもう何も言わない。ただじっと二人を見つめているだけなのだ。

しかし話すのも気の毒な事なのだが、この話は日本でのあの少女誘拐事件をどうしても思い出させる。幼い時から10年間、若くて可愛らしい時期を一つの狭い部屋で生きなければいけなかった少女を思うとどうしてもこの映画の老人をまともに見れないのだ。キム・ギドクは父親にそれと同じだけの憎しみを持っている、ということなのだろうか。
posted by フェイユイ at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | キム・ギドク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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