2005年09月01日

「弓(The Bow)」Wキム・ギドク

言葉による説明がない為にこの映画をどう読み取るのか、観る者によってまったく違うことでしょう。
老人として観るのか、少女になって観るのか、あるいは青年の立場で観るのか。作り手のキム・ギドクも視点が一つではなくある時は老人にある時は少女になっているのでしょう。

昨日の話を少し戻します。
初めて少女に反抗をされた老人はがっくりと来てしまいます。それまで大事に育ててきたものが、あと少しで自分のものに出来る宝物が突然やってきた別の男に持っていかれてしまいそうなのですから。
老人はいらだつ心で自分と同じように古ぼけてしまった船のエンジンを修理しようとしますが、年老いてしまったエンジンはなかなか動き出してはくれません。それは自分そのもののようで老人はさらにいらだち、エンジンを壊そうと叩きだします。だが、破片が自分の額を傷つけてしまうのです。
これを見てそれまで怒っていた少女が急に老人に同情し、優しくハンカチで血をふき取ろうとしますが逆に老人は怒って少女を叩きます。

青年は老人に自分たちを占って欲しいと頼みます。あの少女を傷つけるかもしれない占いで。だが今度は、もう老人も少女も互いを信じる心がないのです。少女は恐れ、老人も恐れています。老人は動揺し、ためらっています。矢は少女を貫くかのように思えます。3回目で青年は少女のブランコを止めてしまいます。

青年は少女を連れて船を出る事を老人に告げます。老人は死を覚悟に少女を引き止めました。なすすべもない青年の前で少女と老人は結婚式をあげます。そして二人は小さい方の船に乗って大きい方の船を離れます。大きい船に青年は取り残されています。

この時の少女の表情は何を表しているのでしょう。うっすらと笑みを浮かべているようではありますが、かといって心から喜んでいるとも見えません。
しばらく船を進めたところで、老人は少女の結婚衣装を静かに取っていきます。かんざし、頬につけた赤い飾り、上着を脱がせて少女を白い下着姿にさせたところで、老人は弓の楽器で音楽を奏でます。少女はじっと聞いていたのですが眠くなったのか横になってしまいます。それを見て老人は楽器を弓に戻し、ゆっくりと少女に弓矢を向けるのです。今にも矢が放たれそうにになった時、老人は矢を天に向けて放ちます。
そして老人は黙ったまま海に身を投じます。

少女を眠らせたまま小船は青年の乗っている船に戻っていきます。青年は小船に下着姿の少女が眠っているのを見ます。老人の姿はありません。
青年が驚いて見つめる中で眠ったままの少女が脚を広げてまるで男性を受け入れるかのように動き出します。これはどうした事でしょうか。霊となった老人が少女の身体に戻ってきたのでしょうか。と見る間に天から矢が降ってきて少女の脚の間に刺さります。矢は老人の放ったものなのですから、老人そのものを表しているのでしょう。青年が慌てて少女を抱き起こそうとすると少女は感極まったように声を上げ、青年を抱きしめます。
青年がはっと気づくと少女の脚の間の矢から血が染み出ているのです。しかし少女はにっこりと笑って矢を抜きました。

今度は小さな船に青年が少女を乗せて大きな船を離れます。少女が離れるとエンジンが動かないはずの舟が動きだしたのです。老人がまた少女を追っているのでしょう。が、それも束の間、船は止まりました。少女は今まで暮らしていた船に向かって手を振ります。船は静かに海の中に沈んでいきました。
ここでの少女はやっと笑っているかのように思えます。だけどもやはり説明はないので、少女の心は解らないのです。

最後に言葉が書かれます。
「力強く美しい音は張り詰めた弓のようなもの。死んでしまうその日まで私はそんな風に生きたい」
これは誰の言葉なのでしょうか。
やはりここで私は少女に思いを託したキム・ギドク自信の言葉だと思います。キム・ギドクはこの映画で自らの苦しみを振り払うことができたのでしょうか。少女のように微笑んでさようならと言えたのでしょうか。
ずっと恨み続けた父親から解き放たれることができたなら彼がこの映画を撮った意義はあるのです。

さてでは観客である私はどう思ったのか、上手く言えないのです。まだ。

少女が狭い船の上で誰にも会えず、何をするでもなく過ごす日々に飛行機が上空を飛んでいきます。青い空を飛んでいく飛行機を見て少女の心がどこかへ行きたいとはっきりとは解らないけど求めている気持ちが私が最も自分を投影できた場面です。
posted by フェイユイ at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | キム・ギドク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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