2005年10月28日

「血と骨」崔洋一・後半

ギル.jpg

後半に入ってますます面白くなった。特に金俊平の半身が動かなくなってからは、どうしようもなく面白い。
前半は若い頃なので性的暴力が多く、嫌悪感を強く感じたが後半になり年を取ってからの父親は以前のような肉体の躍動はない代わり、さもしいだけの金の権化に変わっていくのが見ごたえがある。
妙におかしさが出てきて、娘の葬式の場面など悲しいはずなのに滑稽感が漂う。血肉を分けたはずの息子からは逃げられ、いいように扱っていたはずの女からは金を奪われる。
体が動かなくなった時、俊平は浅ましく助けを求める声を出す。だが妻から与えられた言葉は「いっぺん死ねや」
だが金俊平は死なず半分動かない身体を引きずっても金の取立てに行く。
金俊平がそこまでして貯めた金は全て共和国に捧げてしまう。長男・正雄は言いなりにはならない為、ずっと欲しいと願い、やっと生まれた我が息子を道連れに共和国へと渡るのだ。最後まで生きたいように生きた父親だった、と長男・正雄は言う。

この物語に出てくる男たちは皆こうあって欲しくない嫌な男ばかりだ。人気の韓流スターのようなさわやかで頼もしい男などいない。女たちは哀しい。母親だけでなく姉の花子も痛々しい。好きになった男は政治活動で投獄。好きでもない男と結婚し、その男も父親のような暴力的な男だった。好きだった男は出所した後、「詩を書く」と言い残して北の共和国へと旅立ち何の便りもないままだった。
仕方なく結婚した夫の暴力はやまず、弟からはうっとうしがられ、ついに自殺を選ぶ。葬式の場まで父親によってめちゃめちゃに破壊される(しかもその様がおかしいので気の毒だ)

女たちの中で一人気を吐くのは定子だ。金俊平のために男子が生まれるまで何人もの子供を生み、俊平の体が動かなくなったのを見て金を隠し、ののしってくる金俊平を思い切り叩きのめす。正直何の魅力もない定子だが、この時は見てて溜飲が下がる思いであった。ざまあみろ。
ついこちらも気が荒くなってしまうが、人間の欲望・醜さ・弱さをむき出しにして見せ付けてくるこの物語の中では体裁を整えてもしょうがない。

金俊平を兄と呼びつつ、その妻・李英姫に思いをよせる高信義もある意味情けない。病気のため放射線治療を受けて真っ黒になった英姫の手を取る姿は寂しいが、彼は何もできないのだ。

「血と骨」というのは息子のことだ。
最初の息子は若くしてちんぴらにあっさり殺されてしまった。

英姫との間の息子・正雄は姉・花子に「だんだん父親に似てきたわ」と言われる。彼もやはり金俊平のようになってしまうのだろうか。

もう一人の最後の息子は無理矢理父に連れられて朝鮮へと渡る。寒い共和国で黙々と地面に穴を掘り、寝たきりらしい父親が寝台の中で死んでしまっても何も言わず飯を口に運ぶ。大丈夫、金俊平の血骨はしっかり受け継がれているようだ。
舟でやって来た時の金俊平を演じた伊藤淳史がその役を演じている。
posted by フェイユイ at 01:07| Comment(0) | TrackBack(2) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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