2005年10月30日

[薛/子]子(ニエズ)第八集・ロンズ(龍子)

アチンは海辺で火を焚きながら母の言葉を思い出していた。
「母さんが死んだら、廟へ行ってお線香を上げ、仏様の前で私の罪を許してもらえるよう祈って。私は死ぬのは怖くない。怖いのは地獄でうける罰よ。私が苦しまなくてすむようにお願いしてちょうだい」
アチンは母の言うとおりに仏様にお祈りした。そして激しい雨の中、母の遺骨と写真を父の住む家へ持って行った。
父は、留守だった。アチンは塀を乗り越え父の座る机に母の遺骨を置いた。着ていた雨がっぱを脱ぎ、アチンは部屋を眺めた。壁には若い父と母が仲良く並んでいる結婚の時の写真が飾られている。一度、父が怒って割ってしまったものだが、今ではガラスも替えられていた。自分とディーワーが寝ていた狭い部屋はそのままで寝台の上には二人の服が畳んで置かれてあった。アチンはソファに座り何かを考えているようだ。あれほど怖れていた父親に会う決心をしたのだろうか。だが、父は帰ってこず、アチンは家を後にした。手紙と母の残した指輪を置いて。
追い出されたあの道をまた走って行ったのだった。

夜になり父は帰宅して手紙を読み、置かれていた妻の遺骨を胸に抱いた。黙ったまま二人の結婚写真を見てあやすように遺骨の入った包みを持ち身体を揺らしているのだった。

激しい雨の中、アチンは一人新公園の木の下に座っていた。ずぶ濡れになったままで。そこに一人の男が通りかかった。男は驚いたようにアチンを見つめていた。アチンは悲しみの眼差しで男を見返した。アチンは歩き出し、男は後を追った。男がアチンに追いつき、アチンも男を見た。男の指がそっとアチンの顔に触れた。アチンは黙ったまま男の肩に顔を寄せた。

このときのアチンはすばらしく美しいです。この時点では解らないのですが、男はこのときアチンにかつての恋人アフォンを重ねて驚いたのです。戦慄が男の身体を走ったのでしょう。それに相応しくアチンの表情は悲しみに満ちていました。
そして今回ほぼここまで、殆どセリフのない描写で表現されています。

身体を拭きもせず二人は一室で抱き合った。男は何か取りつかれたかのように激しくアチンを求めた。が、アチンは突然あやまって身体を離す。男も謝って君を驚かせたね、と言うのだった。男はアチンに年を聞き、アチンは18だと答える。
男は10年前、ある人を知った。その子も18だったよ。あの晩、君のようにあの木の下にいた。全身ずぶ濡れで、辛そうに泣いていた。私は彼に聞いた。何故泣いているのか、と。彼は答えた。胸が痛いのだ、泣かないと苦しいのだ、と。変な子だった。君は何故泣いていたの。
アチンは先日、母が亡くなったのだと答えた。母はずっと前に家出していてやっと見つけて看病できたのは僅かだった。でも泣きはしなかった。
男も話をした。「フランスの小説を思い出したよ。母親を失った日、女と出会い愛し合う。そして皆が理解できない理由で人を殺す。太陽がまぶしかったから」「おかしいよ」「もしかしたら、道理のない世界にもともと多くの事があるのかもしれない。常識は通用しないのだ。僕のように。僕も父を先日亡くした。泣かなかったよ。葬列にも参加しなかった。墓の場所も知らない。もう10年戻ってなかったので台北の街並みも変わってしまったよ。つい先日アメリカから戻ったんだ。自分の家すら解らなかった。」「あなたは留学生なの」「違う。逃亡していたんだ。10年前父が言った。私がこの世にいる限り、戻る事は許さん、と」「どんな間違いを起こしたの」「蓮の花さ。知ってるかい」「詳しくないけど、お役所が全部抜いてしまったって聞きました。とても綺麗だったそうだけど」「美しかったよ。あの時僕は蓮を摘んでその人に渡した。彼の手の中でその花はまるで炎のようだった。その時彼は君と同じ18歳だった」「僕は行くよ」「家に戻るの」「追い出されたんだ」「君も追い出されたのか。また会えるかな。名前は」「アチン」「僕は、ワン・クイロン(王kui龍)」


アチンは自分の部屋へ戻るが、シャオユイは留守でリーユエに仕事仲間が遊びに来ていた。アチンがゲイだということで口の悪い一人がからかった。心がいらだっていたアチンはかっとして怒鳴りつける。いつもにないアチンの様子にリーユエは心配して訊ねる。アチンは母が亡くなったといって泣き出した。母も弟もいない。どうしたらいいのかわからない。リーユエは優しく頭を撫ぜてくれた。

ワン・クイロン=ロンズは部屋の整理をしていた。手紙の束などと一緒にシャツは入っていてその中の花柄のシャツをそっとロンズは撫ぜた。それは愛した人が着ていたものだった。
そこへ爺やが入ってきた、ワン家でずっと働いてきた老人だ。ワン家の行く末とともに跡取りである一人息子のロンズ坊ちゃまの事を心配していた。
「父は死ぬ際に僕のことを許してくれたのかい」だがフォン爺は忙しいからとその場を立ち去ってしまった。

アチンは職場でウエイターの仕事をして、もらったチップをあの意地の悪い先輩に取られてしまいそのうえ殴られてしまう。むしゃくしゃしているアチンはつい先輩を殴り返してしまう。その様子を社長に見られ注意を受けた。
アチンがくさくさした状態で公園に座っていると、シャオユイとラオシュウがやってきた。シャオユイはもう林さんのところで働いているのだ。アチンは二人に不満をぶつけた。
そこへ呆然としたシャオミンがやってきた。張さんのことですっかりしょげているのだった。その様子にシャオユイはむかっ腹をたてて、死んでしまえば?張さんになぶり者にされてさ、どうせ生きてても死んでるのと一緒さ。これにシャオミンは「僕は馬鹿かも知れないけど、ホントに何故ダメになってしまうのか解らないんだ」シャオユイは「どうせ他の奴に心変わりしたのさ」などと言うからアチンはなだめて皆でいつものようにローラースケートをして楽しんだ。
アチンは思う「僕はあの人から逃げ出した。彼の目は原始林の中で燃え盛る二つの野火のようだ。執拗で切実だ。まるで命がけで探り求めているようだ。何を求めているのか。僕は不安と動悸を覚えた」

シャオミンが大好きな風呂に入っていると張さんが浴室に入ってきた「背中をこすってやろう」などと言い出す。「相談したい事がある。このままずっとはやっていけない、ということだ。私はお前に明日出て行ってもらいたいのだ。お前を傷つけたくなくてずっと我慢していたのだが、このままでは私自身が壊れてしまう」シャオミンは泣きそうになり「悪い所があるなら改めますから、言ってください。別れたくありません。努力します。追い出さないでください」手をつかんで話さないシャオミンをついに怒鳴りつける張さん。シャオミンは思わず手を離し泣き出した。「私が仕事から帰る前にいなくなっていて欲しい」

シャオミンは誰も気づかない場所で手首を切った。その手首を押さえながらシャオミンは座り込んでいた。

どうしようもないシャオミンが切ないです。この頃のシャオミン役・張孝全はむっちり肥えていて可愛いです(太ってるわけじゃないですが)びしっとはねつけるシャオユイも気持ちいいんですが(彼は強いからですね)アチンはひどく落ち込んでいたのにシャオミンが泣きそうになりながらやって来ると心配してしまうので本当に世話焼きなんですね。

そしていよいよワン・クイロンの登場。彼の思いつめた目は何を見ているのか。今後彼から目が離せません。

原作:白先勇 監督:曹瑞原 出演:柯俊雄(李父)柯淑勤(李母)范植偉(李青)張捷(幼年李青)楊祐寧(趙英)金勤(小玉)阿鳳(馬志翔)龍子(トゥオ・ゾンファ)楊教頭(丁強)呉敏(張孝全)老鼠(呉懐中)林義雄(林茂雄)李昆(老周)
posted by フェイユイ at 20:53| Comment(4) | TrackBack(0) | [薛/子]子(ニエズ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ワン・クイロンの登場、ドキドキしてきました。アチンとどんな風になるんだろう。
もうシャオミンがつらすぎます、幸せになってほしいと切実に思ってしまいました。
Posted by banimi at 2005年11月16日 18:49
こんにちは、banimiさん。
またまた読んでいただけてうれしいです!しかも3つもコメントいただいてありがとうございます。まとめてこちらでお返事しますね。
「罪の子」と呼ばれる彼らですが、何が罪なのか、考えてしまう物語ですよね。
皆、とても辛い運命を背負って生きているのですが、ドラマの全体のトーンは明るいものになっています。これがこのドラマの魅力ですね。
Posted by フェイユイ at 2005年11月17日 11:11
こんにちは。ドラマを見るのに、とても参考になってます。

小敏すごくかわいそうですね。でも、張さんの気持ちも分かる気がします。
張さんは前の男に裏切られてから、ちょっと愛に冷めてしまったんじゃないでしょうか。小敏の純粋な思いが死ぬまで続くとは、張さんは信じられないでいる。だから、小敏が尽くせば尽くすほど、それを失うときの辛さを想像してしまって耐えられなくなるのだと思います。小敏が嫌いになって追い出したのではなく、二人の愛情がうまく噛み合わなかった結果だと信じてます。
だからといって、強引に追い出すのは、あまりに勝手だと思いますけど・・・
Posted by kai at 2006年04月04日 23:35
kaiさん、わ!本当ですか?ありがとうございます。拙訳で却って間違いがあったりイメージが崩れないかと心配するのですが(笑)

kaiさんはシャオミン級に優しい方ですね。私はもうこの張さんが憎くて憎くて!!特に一番好きなシャオミンが苦しめられているのでシャオユイ並みに怒って観てましたよ。ただ結局シャオミンはそんな張さんが好きなわけで他人が割り込む隙はないのですよねえ(ため息)
8集まで観られたのでしょうか?まだたくさんこの素晴らしいドラマを楽しめますね。最後までどうぞよろしくお願いしますね。ぼろぼろな訳ですが見てやってくださいませ。
Posted by フェイユイ at 2006年04月05日 09:21
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